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2009年8月23日日曜日

”専門市場戦略では小さな特別の市場をつくりだす。”

 
本日のページには、4種類の起業家戦略の4つ目「ニッチ戦略」の一つ、「専門市場戦略」の説明が記されている。

昨日の「専門技術戦略」では、特定の技術を武器に市場を占拠する手法を説明した。「専門市場戦略」は特定のニッチ(隙間、適所)市場を指すが、”The Daily Drucker”の冒頭で触れられているとおり、市場規模が「利益を確保できるだけ大きさ」であると同時に、「競争相手がすぐに攻め入ってこない程の小ささ」という点が極めて重要だ。

事例として、アメリカン・エキスプレスが戦後始めた”トラベラーズチェック”を挙げている。開始当初は他の大手が意識しなかった程の市場規模だったが、しばらくして一般人の海外旅行が当たり前になると同時に安全な”現金の代替”として栄えた。しかも現金化されるまでの期間が長い場合で数年間もあったため、莫大な現金を無利子で運用できた、という内容だ。

個人的に日々思うのは、一見「儲からなそう。」というのがニッチの独占において最大の参入障壁であるという事だ。人間の行動は、①感じ ②考え ③行動する、という順序を辿ると思うが、五感を通じて感じる時点で「これは苦労しても、それほど利益は出ないだろう。」と感じてしまうと、次の方法や計画を「考える」ステージに進むことが非常に困難になる。脳が拒否してしまう。この結果、幸いなことに他者が新たな「行動」を実行するには至らない。

実は当社の製品の一つに全国シェアが約7割の製品がある。祖父の代から60年かけて少しずつシェアを伸ばした来たこの製品、工場見学者の反応の大半は「うわっ、これは大変ですね。」「たしかにこれは御社でないとできない仕事ですね。」といった、驚きを通り越した苦笑いに近いものだ。

以前、製造業における”ニッチ市場占拠のプロ”とも言える株式会社エーワン精密の梅原相談役に、「市場を選択する最終的な決め手」について質問した。すると、「あまり儲からなそうな市場で、万が一にもトップになれそうな市場を選びなさい。あとは理屈じゃない。あなたの勘を信じて何がなんでも一位になるために頑張りなさい。」と仰っていただいた。

梅原相談役は他にも、「難しいことは何もない。お客様が求めるのはより良い製品を、より安く、より早く、だ。良い製品は当たり前、安いのも当たり前、付加価値を上げられるのはスピードだけの時代ですよね。」とも仰った。

確かに「専門市場戦略」に必要なのは、複雑な方程式やテクニックではなく、純粋に「この人たちのために、こうしてあげたい。」というビジネスの枠を超えた、ある種個人的な思いやりだ。顧客を徹底的に観察することで、それに組織を愚直に順応させ、仕組み作りをする副産物としてノウハウが”専門技術”として、再びシェアを高めるための筋肉になる。

よって、専門市場戦略が組織に浸透してくると、専門技術は「縋る(すがる)モノ」ではなく、「一定期間で捨てていく”道具”」という認識が強くなってくる。


Today's Questions.
Q:楽をして儲けることを考えすぎて、迷路で迷っていませんか?
Q:変革の必要性から免れるために”できない理屈”を収集していませんか?
Q:日々感謝して仕事できていますか?

Next Page is... 
8月24日”ニッチ戦略の弱点は永続性の欠如である。”
そうです。強いと言われるニッチ戦略にも弱点があるのです。お楽しみに。

3 件のコメント:

  1. 自分が超ニッチマーケットで勝負しているので、今日のブログは大変感銘を受けました。信じる道を進んでよいのだ、と。単なる「顧客」と捉えてしまうことと一人の「人」として接することの線引きの難しさがニッチマーケットの難点でもあり、そしてそれが喜びになり得るのだと思います。しかし、そこを越えていったときに何かしらの可能性が萌芽するように思えるのです。あくまでも理想論ですが。。。

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  2. ありがとうございます。
    専門市場戦略の選択は、「私はあなた(お客様)の期待に応えるため、全力を尽くします。」と宣言する「踏み絵」であることを、顧客は無意識に感じ取っているのだと思います。「(本当の)仲間なのか?」それとも「敵なのか?」というこの直感は動物としての本能的な感覚からくるものなのでしょうね。
    その時点でできることを惜しみなく出し尽くす、というのはとても大変なことですが、だからこそ見えてくる全く新しい世界もあるのだと信じています。
    ただ、その”本気”のベクトルが定まらないとムダなところに力が逃げてしまうことがあります。異なるすべての方一人ひとりを満足させようとせず、より絞った顧客を対象にサービスを体系化していくことで、その極めて小さな市場でより多くの方々を見つけ、喜んでいただけるサービスにできるのではないでしょうか。
    そのためには、やはり5つの質問の最初の問い、「使命」を明確にする必要があるのだと思います。
    すみません。長くて。

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  3. 示唆に富むお言葉、全く仰る通りだと感じました。無駄な所に力を入れすぎて効果が表れないということは、気付いた時は修正できますが、もはやそれが手遅れとなりかねません。経営や戦略に関しては、まだまだ素人同然なので、これからもこちらのブログを通し、色々と学ばせて頂きたいと思っております。今後ともよろしくお願い申し上げます。

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