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2009年11月30日月曜日

”ミドルの減量を開始せよ。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、中間管理職層のスリム化と組織のフラット化についての説明。

ドラッカー教授は中間管理職層(以下、ミドル)のスリム化の為には、ポストが空いたらしばらく静観し、問題なければそのままポストを廃止することを薦めている。

またもう一つの方法として、若いミドルに対して仕事の内容をより挑戦的にしたり、他の部門を管理させたりすることで、その時点での昇進は無くてもやりがいを感じられる職場作りを薦めている。

当社でも以前は元気の良い団塊世代がミドルの多くを占めていた。その当時はなかなか若い者に何かを決定するようなチャンスが廻ってこないため、若いスタッフには常に不満や当時のミドルに対する不信感があったように思う。

また当社の過去に例を見ると、ミドル層で空いたポストに外部で実績のあった人を中途採用したことで失敗に終わるケースが多かったため、たとえポストが空いても絶対に新しい人を入れず、経営者やその他のミドルが兼任するか、社内から選出するという(社員から見れば全くいい加減な)方法を徹底してきた。

同時にリーダーと呼ばれる主任クラスの人を増やし、並列にして協力してもらうことで、複数人数によってミドルの役割を兼任させることができている。

最近、あるリーダーにこんなことを言われたことがある。

「自分が昇格すると、組織の運営がやりにくくなる。会社が期待する仕事はよく理解し、頑張るので、給料も役職もそのままではダメですか?」

昇進から逃げるには出来過ぎたコメントだと思ったが、この言葉は、単に「昇格による自立からの逃げ」としては片付けられない深い意味を持っていると感じた。本人はそれほど気づいていないが、こうした言葉は1グループのリーダーが組織全体を見ながら初めて言える言葉だったからだ。

彼にとっては昇格や昇給が第一の目的ではなく、組織が円滑に回すことが優先されている。この状態を目指してきたにも関わらず、実際にそう言われると驚いてしまった。

社内に一人でもこのような感覚の人が育ってくると、組織の雰囲気は音を立てるように変わっていき、(極端な話)ミドル不在でもなんとか運営可能になってくる。

そして彼等(または彼女等)ではどうしても決定できない領域(会社方針や組織全体におけるリソースの再配置等)の障害物を迅速に取り除くことが経営者にとって重要な仕事だと思う。


Today's Questions.
Q:ポストが空いたら、急いで埋めることが優先されていませんか?
Q:昇格させなくとも、若者達に成長の機会を提供できていますか?

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12月1日”もしそれが意味ある変化であるならばいかなる機会をもたらすか。”
ドラッカー教授は自らを”社会生態学者”であると言っていました。社会生態学とは一体?明日もお楽しみに。

2009年11月29日日曜日

”PRという言葉自体が、広告、宣伝、マスコミ対策など好ましからざる意味をもつにいたった。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、PR(Public Relations)の役割について説明されている。

原著では「”パブリック・リレーション”は、誇大広告、プロパガンダ(布教)、隠蔽の意味を持つに至った。」というサブタイトルになっている。

”パブリック・リレーションズ”と言うと、兎角組織から社会に向かった一方通行のコミュニケーション(大げさな宣伝やマスコミ対策等)が仕事であるように認識されてしまっているが、ドラッカー教授は本日の説明を通じ、本来PRの役割はそれだけではない、と伝えている。

組織の一つ一つの行動は、社会(社員、消費者、市民等)に何らかのインパクト(影響)を与える。そこでパブリック・リレーションズは、組織の活動に対し、社会で生じる微妙な感情の揺れをつぶさに評価し、次なる意思決定に活かすために重要な役割を担っているということだろう。

パブリック・リレーションズは、あくまでもCSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)に基づいた上で社会の信頼獲得を目指さなければならない。WikipediaではCSRを以下の様に定義しており、本日の内容を理解するのに適切な説明だと思うので引用しておきたい。

企業の社会的責任( 英記:CSR: Corporate Social Responsibility)は、企業が利益を追求するだけでなく、組織活動が社会へ与える影響に責任をもち、あらゆるステークホルダー (利害関係者:消費者、投資家等、及び社会全体) からの要求に対して適切な意思決定をすることを指す。(ウィキペディア「CSR:企業の社会的責任」)


コミュニケーションにおいては”聞く”ことが重要であるのと同様に、パブリック・リレーションズにおいても社会の声を聞くところからスタートする必要がある。彼等を驚かせたり、感心させたり、説得したり、欺いたりすることが本来の役目ではない。


Today's Questions.
Q:組織のリーダーがステークホルダーの上に自らを位置づけていませんか?
Q:内外の”信頼”において、持続可能な組織でしょうか?

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11月30日”ミドルの減量を開始せよ。”
中間管理職層の省力化と組織のフラット化に関わるお話です。明日もお楽しみに。

2009年11月28日土曜日

”現業の実績がなければ信頼を得られず理論家として片付けられる”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、スタッフ部門の人選において気をつけるべき点について紹介されている。

昨日も触れたとおり、スタッフ部門とは収益に直接的に関わる業務を支援する部門で、一般的には総務、経理、人事、法務、生産管理等、管理業務を担当する部門を指す。

ドラッカー教授は、このスタッフ部門の重要なポストに、現業(収益部門)の経験が全くない者を任命してしまうと、その者は現業を卑下し、非生産的になってしまう、と伝え、スタッフ部門と現業部門での人事異動を薦めている。

スタッフの仕事に五年から七年携わった後は現業に戻す。再びスタッフの仕事につかせるときは、現業の仕事を五年以上こなした後にする。そうしないかぎり、やがて人形遣い、用人、黒幕となる。(「マネジメント・フロンティア」より)


たしかに当社でも”デスクで働く人”が、”現場の人”を自分より下に見てしまったり、現場の人に人事的な側面について相談を受けたりする場合が見られる。100人程度の組織でもこうした光景が見られるのだから、大手ではさらにその溝は深いのではないだろうか。

最近当社ではスタッフ部門のベテランスタッフを現業部門のリーダーにすることに成功している。その他にも、都度現場の仕事を手伝える環境を整え始めているところだ。

全く毛色の異なる仕事ではあるが、スタッフ部門で得た経験は、現場の改革には新鮮な風を吹かせてくれる。サッカーの様な柔軟なフォーメーションで、お互いの仕事を協力できる組織風土を作っていきたい。


Today's Questions.
Q:スタッフ部門の人が、現業部門の人を、自分の下に位置づけていませんか?
Q:どの様にすれば、両部門の間で人事異動が可能ですか?

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11月29日”PRという言葉自体が、広告、宣伝、マスコミ対策など好ましからざる意味をもつにいたった。”
PR部門の本当の仕事とは?お楽しみに。

2009年11月27日金曜日

”スタッフ部門の仕事の目的はただ1つ 現業に貢献し、組織全体の業績に貢献することである。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、”スタッフ部門”について。スタッフ部門は、収益に直接的に関わる業務を支援する部門で、一般的には総務、経理、人事、法務、生産管理等、管理業務を担当する部門を指す。

ここでドラッカー教授は、スタッフ部門に具体的な目標を持たせ、縮小させることを強く薦めている。スタッフ部門の肥大は、現業部門(収益活動)の効率低下を招いてしまうからだ。

プロフィット(収益)部門とノンプロフィット(非収益)部門という分け方をするなら、スタッフ部門は(例外を除き)ノンプロフィット部門に属することになる。

たしかに、当社の状況を考えてみると、本来は現業のプロフィット部門に集中しているべき経営者(私も含め)や管理職が、スタッフ部門の仕事にかなりの時間を取られているという現状がある。

なぜ我々は管理業務を知らぬうちに増やしてしまうのだろうか。

先にもご紹介(8月23日 記事参照)したエーワン精密(HP)の様な高収益企業を見学すると、事務所の雰囲気がその他の企業と全く異なる。スタッフ部門の人員の少なく、淡々とした静かなムードの中、ある事務員は自分のデスクで現場の作業を手伝っていたりするのだ。

商社の様な、営業活動が主な組織では比較的「プロフィット v.s. ノンプロフィット」の人数比について議論になる(勿論商社では殆どがプロフィット部門に属する)が、正直なところ製造業ではあまりこうした話題を耳にしたことがない。

この辺りを更に意識することで、当社でもかなりの潜在能力が眠っていそうなので、朝礼で説明し今後は全員で意識していきたいと思う。

Today's Question.
Q:あなたの組織では「プロフィット v.s. ノンプロフィット」について議論していますか?

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11月28日”現業の実績がなければ信頼を得られず理論家として片付けられる”
スタッフ部門に任命すべき人についてのお話。明日もお楽しみに。

2009年11月26日木曜日

”コミュニケーションの向上は送り手ではなく受け手によってもたらされる。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、コミュニケーションの基本について。ドラッカー教授は、聞く者がいなければコミュニケーションは成立せず、それは”ノイズでしかない。(There is only noise.)”と説明し、”受け手”こそがコミュニケーションの鍵を握っていることを伝えている。

・人は知覚できるものしか知覚しない。
・人は受け手の言葉(言語または用語)でしか意思疎通ができない。
・人は期待しているものしか見たり聞いたりしない。

It always demands that the recipient become somebody, do something, believe something. If it goes against her aspirations, her values, her motivations, it is likely not to be received at all or, at best, to be resisted. (P.F. Drucker, "The Daily Drucker", p.360, Harper Business)

コミュニケーションは、常に”受け手”を誰かに変えたり、何かをやらせたり、何かを信じさせたりしようとする。もしそれが相手の願望、価値観、やる気に逆らうものの場合、それは全く受け入れられないか、良くても抵抗されることになる。(同上 中村克海訳)


考えてみると、組織内に限らずとも、確かにあらゆるコミュニケーションには必ず目的があるように思える。

このブログの読者の多くはTwitterユーザなので、Twitterに見るコミュニケーションについて少し触れてみたい。

Twitterでは「投稿」を指す「tweet(直訳で”鳥のさえずり”)」という行為を、日本では”つぶやく”と表現しているが、この”つぶやく”には個人的にどことなく違和感を感じていた。

本日のページを読んで気づいたが、その違和感は、”つぶやく”と言う行為は相手不在の中で行われる行為であると認識されているからだと確信できた。

実際、個人的には「Twitterには(全く目的のない)”つぶやき”は、ほとんど存在しないと感じている。

本来”Tweet(鳥のさえずり)”という言葉の意味には相手を探すという明確な目的があるわけで、必ず受け手が存在する。つまり、”Tweet”にはマーケティングが前提としてあり、相手を無視した”つぶやき”はノイズになり得る。

著名人などにはあまり当てはまらないかもしれないが、それ以外のユーザがTwitterで短期間にフォロワー数を増やすには、相応のマーケティングが必要となる。(無論、多ければ良いというわけではないが。)そのユーザの軸となる目的や、その目的に呼応する相手(受け手)への配慮なしには困難だと思う。

ヘビーユーザにマーケッタ(マーケティングの専門家)やコンサルタントが数多く存在する理由の一つは、自らの投稿の内容によってリプライ(返答)やフォロワー(支持者、購読者)の数が変化するTwitterは、マーケッタが自身のマーケティング能力を確認&開発するには格好の場なのかもしれない。

このように、「コミュニケーション=マーケティング」と考えてみると、深層心理学的にも納得できる部分が多々あり、今までに見えなかったことが色々と見えてくる。

最後に、マーケティング(Wiki)という言葉の意味が一人歩きしがちなので、Wikipediaによる定義を、本日のテーマを意識しながらじっくり再読してみようと思う。


Today's Question.
Q:今、発しようとしている、その言葉の目的は何ですか?

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11月27日”スタッフ部門の仕事の目的はただ1つ 現業に貢献し、組織全体の業績に貢献することである。”
明日もお楽しみに。

2009年11月25日水曜日

”組織内の活動は組織全体への貢献によってすべて位置づけなければならない。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、”組織への貢献”によって分けられる4種類の活動とその優先順位の考え方について。組織で行われている様々な活動を区分し、どの活動を優先させるべきかが説明されている。

成果活動
成果に直接/間接的に関わりのある測定可能な活動

支援活動
他の部門にとっては必要不可欠だが、自ら成果を生まない支援的活動

衛生&家事活動
成果と直接/間接的に関わりのない付随活動

トップ・マネジメント活動
経営者による意思決定や、その他の活動

ドラッカー教授は、成果を生む活動の中においては、直接的に収益に繋がる活動(key activities)を優先させ、仕組み化を図る必要であり、重要でない活動(nonkey activities)が優先される事があってはならない、としている。

本日のページ、原著「The Daily Drucker」のアクションポイントには「成果活動を見える化し、支援業務が成果活動より上位になってしまっていることを認識して下さい。そして福利厚生活動を従業員に委譲することを検討して下さい。」と書かれている。

スタッフ自らが優先順位を決めることで、全員で「何が先んじられるべきか?」を共通認識として育むことで、あらゆるムダを排除し、全員の強みを「なされるべき事」に集中させることができるということだろう。

こうして書いていて、以前視察に訪れた亀田メディカルセンター(千葉県鴨川市)の事を思い出さずにいられない。この病院が「最も尊ぶところ」として挙げているのは、「患者さまのために全てを優先して貢献すること」である。

このような事を明記しているホームページはよく見るが、この病院に行くだけで、スタッフの一人ひとりが”本気”でそれに取り組んでいることがひしひしと伝わってくるはずだ。みなさんも是非機会があれば訪問してみて欲しい。

良い意味で、常軌を逸したこの病院。リゾートホテルと病院を融合させた様な、夢の施設だった。そこで私が見た特徴を紹介することで、この施設の”優先順位のあり方”を感じていただければ幸いだ。

・東京駅から無料高速シャトルバス(約20本/日)
・玄関でドアマンが車いすの患者をサポート
・総合病院にも関わらず、予約すれば診察まで約20分
・足音が響かないよう、廊下は全て絨毯張り
・スタッフの廊下と患者の廊下が別
・廊下はギャラリーとして利用
・全室個室制
・食事のメニューは画面操作で決める
・イタリアンレストラン
・バー(主治医の許可があれば飲酒可能)
・世界中で名医をヘッドハンティング
・医師や看護師が殺到している
・霊安室は天に最も近い場所として、海が一望できる最上階

等々、他にも様々な特色があったが、すべては患者の側から見て「こんな病院があったら…」という夢の一つ一つを実現するための活動に集中しているように見えた。視察から帰宅後、妻に「死ぬときはこの病院がいい。」と説明したのを憶えている。


Today's Questions.
Q:組織で最も優先されるべき仕事は何ですか?
Q:それを全員が理解していますか?

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11月26日”コミュニケーションの向上は送り手ではなく受け手によってもたらされる。”
ドラッカー流コミュニケーションの捉え方。明日もお楽しみに。

2009年11月24日火曜日

”事業ごとに組織を組み立てられなくとも疑似分権制がある。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、ドラッカー教授が”疑似分権制(simulated decentralization)”と呼んでいる、部門別独立採算制についての説明だ。

現組織を分社化し、独立採算にすることが難しい場合であっても、部門を一つの会社と捉えることでその損益を擬似的に計上する手法で、管理業務等の部門間で行われている活動についてはコストに20%の利益を上乗せする等して取引することを薦めている。

これは京セラの創業者、稲盛和夫氏による「アメーバ経営」を身近に学ぶことができる我々日本人にとっては非常に理解しやすい話だ。

稲盛氏の公式サイトを見ると、アメーバ経営の誕生についてこう述べられている。

京セラが急速に発展し、規模が拡大するなかで、私は、ともに苦楽を分かち合い、経営の重責を担う共同経営者がほしい、と心の底から願うようになった。そこで、会社の組織を「アメーバ」と呼ばれる小集団に分け、社内からリーダーを選び、その経営を任せることで、経営者意識を持つリーダー、つまり共同経営者を多数育成した。(稲盛和夫公式サイト「アメーバ経営とは」より)


そして、「アメーバ経営」の目的については以下の3つが挙げられていた。

  1. 市場に直結した部門別採算制度の確立
    会社経営の原理原則は、売上を最大にして、経費を最小にしていくことである。この原則を全社にわたって実践していくため、組織を小さなユニットに分けて、市場の動きに即座に対応できるような部門別採算管理をおこなう。

  2. 経営者意識を持つ人材の育成
    組織を必要に応じて小さなユニットに分割し、中小企業の連合体として会社を再構成する。そのユニットの経営を、アメーバリーダーに任せることによって、経営者意識を持った人材を育成していく。

  3. 全員参加経営の実現
    全従業員が、会社の発展のために力を合わせて経営に参加し、生きがいや達成感を持って働くことができる「全員参加経営」を実現する。

部門別独立採算制を徹底することで、部門別の経営状況を見える化すると同時に、全員の経営感覚を養いながら未来のリーダーを育成することができる点が素晴らしい。

コスト意識が強まることで相互の協力が疎かになる可能性もあるが、その点は昨日書いたように、部門をまたいで見渡せる人間が目を光らせ、会社全体のリソースとして最終的な意思決定をすべきだろう。

当社でもやっとこの取り組みができる体制が整ってきた。最大限の責任と権限をより多くの人に提供することで、優れた経営者育成機関にしていきたいと思う。


Today's Question.
Q:部門別会計に取り組んでいますか?

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11月25日”組織内の活動は組織全体への貢献によってすべて位置づけなければならない。”
組織内の活動をどのように位置づけるべきか、というお話です。お楽しみに。

2009年11月23日月曜日

”全体と未来にかかわることはトップマネジメントの専管である。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、「マネジメントー課題、責任、実践」からの抜粋で、分権型組織においてトップマネジメントが管轄すべきことの説明だ。

ドラッカー教授は、たとえ分権制の上に成立している組織だとしても、全体を見渡す立場にいるトップマネジメントの責任において、組織全体の品位や将来のために意思決定を行うべき仕事があるとし、以下の3つを本日のページで挙げている。

①市場と価値観の決定
・技術、市場、製品の選択
・棄てるべきビジネスの選択
・価値観、信条、原則の決定

②資金の配分
・重要な資金(key resource of capital)の配分決定
・調達と投下

③人材の配置
・主要な人材(key professionals)の配置
・人を重んじた人事方針の決定

いくら独立採算で各事業が順調に進んでいる様に見えても、その全体像を掌握する者(トップ・マネジメント)に仕事が無いわけではないと言うことだ。明日のため、常に全体を見渡しながら上記の3つを修正し続ける必要がある。

また、組織に存在するあらゆるリソース(経営資源)は、それがどの部署にあったとしても、”組織全体”で保有するリソースであり、再配分は自由にできることを忘れないようにしたい。

上記3つのいずれかにおいて、”なされるべき選択”を行われると、大方の場合は部下から強い反発が伴う。これがある意味”合格のサイン”であると言えるだろう。

なぜなら、組織全体にとって重要な意思決定は、”変化”によって生じる一時的な弱体化や問題を、現場の人間が真っ先に感じるからだ。社員が、売上や利益の低下、工数の増減、顧客の変更、方針転換、優秀な人の移動等を嫌うが当然だと考えるべきだ。

しかし、かといって”現状維持”を欲して組織を現状のまま放置したのでは、結果的に維持できなくなり、そもそもこれではトップ・マネジメントの存在意義は無いのと同じだ。

組織においては階層によって視点が違うのが当然であり、上記の3つの仕事はトップ・マネジメントの仕事であることを、トップ自身も、そして組織全体でも理解している必要がある。

そうはいっても、例えば、優秀な人材を現在の部署から外し、将来のためのプロジェクトに起用する等という指示に対する上司の反発は凄まじい事が多いと思う。

そうした場合、当社で試すのは、NLP(Wiki)の”ポジション・チェンジ”にヒントを得た方法だ。

本人(幹部や管理者)に”社長の座”に座ってもらう。もちろん組織的にではなく、物理的に、”会議室で社長がいつも座る椅子”に座ってもらい、「あなたが社長だとします。会社全体を見渡しながら決めるとしたら、どうしますか?」という問いを投げかける。

その結果、多くの場合はトップ・マネジメントの主旨を大方理解してくれたり、「それであれば、こういう方法も…」と、手持ちの情報を元に、より良い手段を見いだしてくれる事も多々あるのだ。


Today's Question.
Q:トップとその他が、トップの管轄が何であるか理解していますか?

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11月24日”事業ごとに組織を組み立てられなくとも疑似分権制がある。”
明日はアメーバ経営の様な、部門別独立採算についてのお話です。お楽しみに。

2009年11月21日土曜日

”分権制の強みの1つが若いうちにトップ要員を識別できることである。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、分権制による権限委譲とそれが実現するリーダーの育成について。

ドラッカー教授は、”大規模かつ複雑な組織を小規模かつ単純な複数の事業に分割する”ことにより、責任を伴った権限を与える機会を増やすことで、組織を人材育成機関として機能させましょう、と伝えている。

大きな責任を抱えながらも、なされるべき事を自らの意思で選択できる人は、見ていて実に美しい。組織は仕事を通じてその様な人を育み、輩出する力を持っているという意味において、まさに”無限の存在”である。

私の仕事には、”働いている人”と話す機会以外にも、”入社する人”と”退職する人”と話す機会がある。退社する人を見ていつも自分に問うのは、「当社がその人の強みを存分に引き出すことができたのだろうか?」という問いだ。

残念ながら、この問いに対し、自分自身が満足できたことは未だかつて一度も無い。常に、「あの部署を任せられたのではないか?」とか、「あの人の教育を任せられたのではないか?」という後悔に似た問いが頭をよぎる。

チャレンジングな仕事を任せることで、より”責任ある選択”ができる人に育てることができたのではないかと感じているのだ。

会社運営の醍醐味は、”顧客に感謝された”瞬間よりも、”人の成長の瞬間を、近くで見ることができた”瞬間に感じる。

その”成長の瞬間”というのは、多くの場合、何らかの課題を目の前にして延々とスタッフ本人の抵抗が続いた後、ある日突然やってくる瞬間を指す。

「俺(私)、やります。」

責任ある仕事ほど、その者に自立を余儀なくする。今までのように言い訳できないことを無意識で感じるからこそ、その人は悩み続け、逃げ続けるのだ。

しかし自分との葛藤の末、この言葉が聞ければ、その人の成長はまずは一安心だ。あとは全力で進むのを見守りながら、障害となる部分を支援していけばよい。

いかなる仕事でも強制的にやらせてしまう方法の方が、その時点では速いかもしれない。しかし、私はあえてこの”自ら選ぶ瞬間”を辛抱強く待つことにしている。一方的な命令では得られない”加速度的な成長”が後からやってくることを信じているからだ。

大規模な組織ではないので、そう簡単に事業を分割させることはできないが、今後もより多くの”選択の機会”を提供し、一人ひとりが”経営者”の如く意思決定できる環境を整備していこうと思う。


Today's Questions.
Q:今日、トップが居なくなっても組織として機能しますか?
Q:事業部の独立採算について話し合われていますか?

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11月23日”全体と未来にかかわることはトップマネジメントの専管である。”
明日はお休みとなります。明後日のDrucker365は、「トップマネジメントの専管」について。あくまでもトップマネジメントが決定すべきこととは?お楽しみに。

2009年11月19日木曜日

”組織は道具である。専門分化することによって自らの目的遂行能力を高める”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、「ポスト資本主義社会」からの抜粋。専門性を高めることで社会に対する貢献力を向上させることができ、多角化によって力を分散させるべきではない、といった説明になっている。

このページでドラッカー教授は、米国肺臓協会や心臓協会等を例に挙げ、これらの医療系組織が成果を上げているのは専門に特化しているからであると説明している。

考えてみれば、国内には200万社近い会社組織の他、無数の個人事業者や非営利組織が存在する。それらのほぼ全てが”何らかのニッチ(自然生態系で言われる「適所」)”を探して旅をしているようなものだ。多角化しながらいくつものニッチを担当できるほど甘くはないはずだ。

子供の頃に親しんだ、”フルーツ・バスケット”という椅子取りゲームを憶えている方も多いと思う。実はこのゲーム、社会における事業の”選択と集中”に酷似しているのだ。

このゲームでは予め全員がりんご、みかん、バナナなどに分かれており、鬼の子が「りんご!」と言ったら、りんごの子だけが速やかに移動して今までと違う椅子に座らなければならない。

ここで幾つかの椅子で迷ったり、沢山の子が取り合いをしている椅子に座ろうとすると、競争に負けて座れなくなってしまう。

一つの椅子を見つけたら、その椅子だけの事を考え、座れたとしても、しっかり椅子をつかんで自分が椅子から放り出されないようにして身を守ったものだ。

事業においても、脇目もふらず選んだことに集中しなければならない。

ちなみに、フルーツ・バスケットというゲームには鬼が「フルーツ・バスケット!」と叫ぶことができるルールがあったのを憶えていらっしゃるだろうか?この号令の時は、りんごも、みかんも、バナナも全員が椅子を立ち、違う椅子を探さなければならない。

そして、今まさに”社会”という名の”鬼”が「フルーツ・バスケット!」と叫んでいる様に感じざるを得ないのだ。我々全員が、どの椅子に自らの組織が座るべきなのか、白紙の状態から考えなければならない。

ある程度の競争は避けられない。しかし、今どき「これなら確実に儲かるから…」という安易な考えだけで、戦えるほど幼稚な市場ではない。取っ組み合いの喧嘩をしている間に、座れる(座るべき)椅子はどんどん他の組織に取られていくのだ。

なるべく早い段階で、自らの組織が一生大切にしたいと思える椅子を見つけ、しっかりと椅子に重心を乗せることによって、より高いレベルで社会の助けになれる様な組織を育てていきたい。

特定の顧客が、特定の目的で課題を抱えた時、「これについては、あそこに相談すればよい。」「これを買うなら、あそこしかない。」と言われるようになければならない。

Today's Questions.
Q:一生付き合えそうな”椅子”を見つけましたか?
Q:もし、自らの組織が今日消滅したら、どれだけの人に、どの程度の悪影響を及ぼすことになるだろうか?

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11月21日”分権制の強みの1つが若いうちにトップ要員を識別できることである。”
明日は都合によりお休みをいただきます。明後日の更新をお楽しみに。

2009年11月18日水曜日

”階層の終わりなる言葉を耳にする。あきれた馬鹿馬鹿しさである。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、「企業とは何か」、「明日を支配するもの」、「イノベーターの条件」からの抜粋で、階層(hierarchy)と平等(equality)についての説明だ。

このページでドラッカー教授は、「階層を伴う現代社会は不平等だ。」とする”平等主義者”を批判し、文末で以下のように説明している。

For the very concept of justice implies rewards graduated according to unequal performance and unequal responsibility.(P.F. Drucker, "The Daily Drucker", p.352, Harper Business)

真の公平とは、平等ではない能力と責任に合わせた、段階的な報いを指す。(同上、中村克海訳)


組織には、パートタイマー(以下、パート)と同等の責任レベルを期待する管理職もいれば、管理職と同等の責任レベルを期待するパートも存在する。

現場が忙しくなると、前者は頭で考えずにパートの作業を手伝い、後者は、忙しくなると他のパートと恒久的な対処策を練る。

私はこのような光景を目にすると、前者には「タイムカードを用意しましょうか。そもそもその作業速度ではウチのパートは勤まりませんが…。」と厳しく皮肉を言い、後者の上司には「彼女(または彼)の正社員登用を検討しましょう。」と伝える。これが真の平等だと思う。

組織には本当に様々な人がいるのだ。

自らの意思でより正しい選択を追い求め、それが厳しい選択であっても楽しみながら成果を出す人。義務感に駆られ、「これこそが正しい選択なのだ」と苦しみながらも何とか突き進もうとする人。人一倍"”自由”を求める傍ら、自分では選択せず、人の責任の下に居座る人。自ら選択はしないが、言われたことには常に笑顔で頑張る人。何を言われても不満な人。等々…

これらの人々に対する報酬や対応が完全に一律化されたとしたら、自立した能力の高い人と、依存を求める能力の低い人が同時に組織から去ることになるだろう。

私は、自らの意思で”なされるべき事”を見つけ、責任ある選択のできる人には、いくらでもチャンスを提供できるような組織にしていきたいと思う。これまでは管理職の立候補制にしてきたが、本日のページを読んでみて、パートの方にも正社員登用の意味をよく理解してもらい、立候補制にできる様な組織にしたいと感じた。

Today's Questions.
Q:責任を伴う選択ができる人にチャンスがある組織になっていますか?
Q:優秀な人が辞めていませんか?それはなぜですか?

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11月19日
”組織は道具である。専門分化することによって自らの目的遂行能力を高める”
多角化のリスクと成果を上げる”選択と集中”についてのお話です。
明日もどうぞお楽しみに。

2009年11月17日火曜日

”社会的な事象のなかで真に意味のあるものは定量化になじまない。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、定量化(Quantification)の限界について。ドラッカー教授は、大切なことは往々にして数値化(定量化)できないとし、ヘンリー・フォードによる自動車の大量生産と低価格化が我々の社会に及ぼした、”計り知れない”影響について紹介している。

The most important reason why I am not a quantifier is that in social affairs, events that matter cannot be quantified. (P.F. Drucker, "The Daily Drucker", p.351, Harper Business)

私が”数字屋”ではない最も重要な理由は、社会で最も重要な事柄は数値化(定量化)できないからである。(同上 中村克海訳)


我々が毎日目にするニュース、新聞記事、広告、包装、資料、検査結果等々、身の回りで目に飛び込んでくる数字の一つ一つをじっくりと観察してみよう。

その大半は純粋に起きていることをそのままを表現するために生まれたのではなく、”特定の人が、特定の人に、特定のメッセージを伝えるために集計された数字”であることが容易に感じ取れるはずだ。

数字は、人の意思決定に甚大な影響を及ぼす。人は数字に依存し、”その数字に責任を負わせる”ことで、重大な意思決定を下している。

我々は、映画を興行成績で選んだり、車は燃費で選んだり、マンションは面積で、会社は資本金で、デジカメは画素数で、美味しい店はメディアで紹介された回数で、みかんは糖度で選んだりしてしまう。

作られた数字による洗脳によって、我々の脳は”感じる→考える”のプロセスを半ば強制的にスキップさせられ、即座に”行動する”ことを急かされているのだ。

このような環境下、我々の知覚能力は急激に退化しているに違いない。

数字という、情報のかけらだけを信じ込むのではなく、今そこで起きていること全てを感じ取る力を、今一度取り戻す必要がある。そのために、今できることは何だろうか?

個人的にお勧めしたいのは、しばし”数字のない世界”に身を置いてみること。できれば自然の中で時計も持たずにのんびりしてみると良いと思う。都会にいてそれがなかなか難しいのであれば、カフェでのんびりしながら歩いている人達を観察するのも良いかもしれない。

電車の中であれば一切の広告に目を向けない努力をしてみるか、それが難しければ、車内吊りの情報を見て、そのままを受信するのではなく、「誰が、誰に向け、何の目的でこの数字をここに提示しているのか?(そして或る答えを見いだせたら)…だとすると、将来の社会にどういう影響があるのだろうか?」と考えてみるのも良いかもしれない。

とにかく、一旦目を閉じ、耳を済ましてみると、今まで聞こえなかった未来の足音が聞こえてくるのだと思う。


Today's Questions.
Q:無添加の情報を全身で感じ取っていますか?

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11月18日”階層の終わりなる言葉を耳にする。あきれた馬鹿馬鹿しさである。”
真の平等とは?明日もお楽しみに。

2009年11月16日月曜日

”自然発生的に生ずるものは混乱、摩擦、不手際だけである。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、組織構造について。ドラッカー教授は”正しい組織構造”を追求するのではなく、仕事に最適な構造を探し、確認し続けることを薦めている。

そしてその上で、守るべき原則についても紹介されている。

①透明な構造
誰もが構造を理解できる組織。

②最終的な決定権を持つ者がいる
最終的な意思決定者が明確な組織。

③権限=責任
権限には、責任が伴う。

④上司は一人
誰にとっても、上司は一人。

個人的には、ここでドラッカー教授が説明しているニュアンスよりも、フラットかつ有機的な組織が日本では実現できると思っている。

人は、どうしても”頼りがいのある壁”に寄りかかってしまうものだ。多くの組織構造のように、頑丈で変化に乏しい構造を継続すると、そこにいる人は本質的な問いを忘れてしまうように感じる。

部署間の敷居など”古い組織構造”のムダな箇所は常にそぎ落とし続けることで、事業の目的が”顧客の創造”であることをみんなで実感できる、バリアフリーで柔軟な組織が理想的だ。

当社でも、ある事業部の”完全バリアフリー化”を目指してきたが、近々やっとのことでそれが実現する見込みが見えてきた。我々が”完全バリアフリー”というのは、事業部全体を、場所的にも、組織構造的にも一つの大広間にしてしまうという試みだ。これにより、営業と製造の区別も無くなる予定だ。

ここでモデルにしているのは、攻守で担当が変わるアメフト式ではなく、常に選手による自己判断がベースになり、お互いを補完し合いながら動き続ける(判断し続ける)”サッカー型組織”だ。

サッカーでは、常に変化する相手チーム(事業で言えば、顧客や市場等の外部環境)の動きに自分のチームの組織を順応させる必要がある。ポジションは各自持ち、その担当に必要な技術を日々強化しているが、試合においては過度にポジションに依存することがない。フィールドのどの場所においても、自らの”強み”を活かす方法を意識している。

お互いがお互いの仕事ぶりに声を掛け合うことで、常にベクトルの修正をしているし、フォワード←ミッドフィルダー←ディフェンダー←キーパー←監督と、戦況をより冷静に客観視できる順で指示を優先させている。

完全なフラットとはいかなくとも、”他の部署でも自らが貢献できる場所があることが見える”環境を整えることで、自然と相互の協力が活発化してくるのではないかと思う。そのためには、企業体だけでなく、さまざまな異なる組織を参考にしていこう。


Today's Questions.
Q:メンバーが自由な(責任を伴った選択ができる)組織ですか?

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11月17日”社会的な事象のなかで真に意味のあるものは定量化になじまない。”
定量化の限界についてのお話です。お楽しみに。

2009年11月15日日曜日

”正しい方向づけを行うだけでなく間違った方向づけをなくさなければならない。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”では、目標達成における下(部下)から上(上司)へのコミュニケーション手法として、”マネジメント・レター”というものについて紹介されている。

昨日は”明確な目標設定”の隠れたリスクについて触れたが、目標を持つこと自体が危険であるというわけではないので、誤解の無いようにしたい。組織で活動する以上、目標や達成イメージ(以下、ヴィジョン)を全員で共有し、それぞれの強みやリソース(資源)を集中投下する必要がある。

しかし、目標の共有ができても、ヴィジョンの共有が欠けることによって発生する”意識のズレ”は、達成までのプロセスにおいて、いかんともしがたいムダや障害を発生させてしまう。

昨日登場したペーターと山羊たちのことを今一度思い起こしていただきたい。彼等は定量的な目標なしに(極端な話、ヴィジョンのみで)目的を達成している。

定量的な目標だけでは、アルバイトによる”ビラ配りの配布ノルマ”の様に、せっかくの労働が全くのムダに終わってしまう可能性もある。”いかなる状態を実現するために、今何が必要なのか?”をそこに関わるすべての人で、常に問い続けるのが効果的だ。

ドラッカー教授は、上司と部下の目標やヴィジョンに大きなズレを生じさせないよう、本日のページで紹介されている”マネジメント・レター”の活用を勧めている。

そして、マネジメント・レターには以下の要素を盛り込むことを示唆している。

①上司の目標
②自ら(部下)の目標
③自らに期待されていると思う水準
④目標達成のために行うべきこと
⑤目標達成のために障害になっていること
⑥組織が行っていることで助け(または妨げ)になっていること
⑦上司が行っていることで助け(または妨げ)になっていること
⑧目標達成のために次の一年間で行うべきこと

何度かここで紹介した当社の”振り返りシート”には上記の要素も大きく盛り込まれている。部署のテーマを冒頭に、自らの良かった点(○)と次月より良い結果を出すための具体的行動(!)をリストし、上司に確認印をもらう。

そして勿論、部下のベクトルのズレについては、口頭でも良いので必ず1対1で話し合う様、上司に勧めている。


Today's Questions.
Q:数値目標だけでなく、ヴィジョン(達成イメージ)を共有できていますか?

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11月16日”自然発生的に生ずるものは混乱、摩擦、不手際だけである。”
組織構造における守るべき原則についての紹介です。明日もお楽しみに。

2009年11月14日土曜日

”目標は絶対のものではない。方向づけである。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、目標の使い方について。ドラッカー教授は、目標は大事だが、それによって組織を拘束させてはならないと伝えている。

目標は絶対のものではなく、方向を示すものである。命令されるものではなく、自ら設定するものである。未来を決めるものではなく、未来をつくるために資源とエネルギーを動員するためのものである。(P.F.ドラッカー著、上田惇生訳「マネジメントー課題、責任、実践」より、ダイヤモンド社)


目標は、使命達成までの通過地点であるべきだが、”目標とその達成までの道のり”をあまりに固定化してしまうと、組織全体の依存を招くことになりかねない。

あまりに”道を舗装”してしまうと、メンバーの思考停止を招き、イノベーションが起こりにくい環境が生まれてしまうのだ。

この例えとして、私がよく話すのは「アルプスの少女ハイジ」に登場する”ペーターと山羊たち”の話だ。ペーターがリーダー、山羊がメンバーだとする。

ペーターの役割(使命)は、村の山羊たちを丘の上の連れて行き、そこに生える柔らかで美味しい草を食べさせること。丘のてっぺんに到着すると、いつものんびり昼寝するペーターの周りで山羊たちが嬉しそうに草を食べるシーンが印象的だ。

さて、目標地点までの道筋は大方では決まっているが、山羊たちはペーターを追い越しながらも、実に自由気ままに楽しみながら坂を上っていく。ペーターに「こっちだよ。」と注意されるのは、群れから著しく遅れた山羊や危険な崖に近づく山羊だけだ。

ペーターは、ヤギ達に細かいスケジュールを強いるわけでもなく、通る道を一つに限定しているわけでもなく、理想の歩く姿勢を定めているわけでもない。それでも毎日、ペーターはこの難しい任務を果たしているのだ。

そして、これを実現しているのは、山羊たち頭に”美味しい草を食べている”イメージ(以下、ヴィジョン)が明確に描かれているからだろう。そのヴィジョンを持てているからこそ、生まれたばかりの(経験の浅い)子ヤギ、ユキちゃんのように迷子になってしまわず、寄り道はしつつも最後には頂上に到達することができるのだと思う。

私の組織で目標としているのは、このペーターと山羊たちの関係だ。確固とした目標やプロセスを構築することによって、本質が失われてしまわない様、寄り道や新たな発見をしつつも、常に本質については全員が共通言語で話し合える組織を育てていきたい。


Today's Questions.
Q:明確な目標が組織を拘束していませんか?
Q:詳細なスケジュールに囚われるよって、”すでに起こった未来”に鈍感になっていませんか?

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11月15日”正しい方向づけを行うだけでなく間違った方向づけをなくさなければならない。”
上司へのコミュニケーション手法、「マネジメント・レター」について。明日もお楽しみに。

2009年11月12日木曜日

”マネジメントの成果は5つの仕事で決まる。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”も、「マネジメントー課題、責任、実践」からの抜粋で、マネージャーの”5つの仕事”が紹介されている。

①目標を設定する
②組織化する(仕事の分類と分担)
③チーム作りと動機付け
④評価する(評価基準を定める)
⑤人を育成する(自らを含めて)

本日の内容は、ページに書いてある通りの内容なので、ここで一つ一つの項目に対してのコメントは必要ないと思う。詳細については本で確認していただきたい。

しかし、どれも当然だと思いつつ、この5つを並べてみて気づいた事が一つあった。④の評価は、”継続的な活動のレベルアップ”を図る上で極めて重要な仕事にも関わらず、これに特化して教えているセミナー(研修など)があまり見かけないことに気づいたのだ。

こうしたセミナーがなぜ少ない(流行らない)のかを考えるのは別として、我々は公平公正に物事を評価するのがあまり上手でない。人の作ったものに文句をぶつけるのは簡単なことだが、自らの組織の活動を定量&定性的に、ニュートラル(中立的)な視点で評価できるマネージャーは少ない。

しかし、マネージャーやその部下達が冷静にフィードバック分析(自己評価)ができるようになると、上からの指示をかなり減らすことができ、メンバーにも参加意識が芽生えるので、組織は一気に自立してくる。

やること自体にではなく、成果に対して焦点を合わせるようになってくるのだ。フィードバックについて、当社で取り入れているシンプルかつ効果的な手法(○と!)は、10月14日の”フィードバックが並の人間に一流の仕事をさせる。”で紹介したので、未読の方は是非お試しいただきたいと思う。

つい先日、当社が出展した展示会の反省会を参加したメンバーで行った。ホワイトボードに○と!だけを書くだけで、私のファシリエイト(議事進行)を殆どせずにも、メンバーだけで次なる具体的行動項目を明確にすることができた。


Today's Questions.
Q:あなたが最も得意としているのは?どの仕事ですか?
Q:どのようにすれば、最も欠けている仕事のレベルアップができますか?

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11月14日”目標は絶対のものではない。方向づけである。”
明日の内容に対しての感想は、本日の記事と重複するので、お休みさせていただきます。明後日の「ドラッカー 365の金言」は、目標によって、完全に活動を拘束してはならないというお話です。お楽しみに。

2009年11月11日水曜日

”娘の嫁ぎ先を探すのであれば娘が最高の妻となる男でなければならない。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、「マネジメントー課題、責任、実践」からの抜粋で、事業売却における注意点について説明されている。”事業売却”というと大手に限られた話のように聞こえてしまうが、必ずしもそうとは限らない。

事業の”選択と集中”を推進する中、自らの組織にとって不要な事業が明らかになってくることがある。そうした事業を切り離す際、我々が注意すべき事は、「(自らが)要らないからといって、汚れた状態で、梱包もせず、説明書もない状態で人に贈ろうと思うな。」とドラッカー教授は言いたいのではないだろうか。

自らの組織の”強み”を発揮させるためには、自組織が得意とする分野に絞り込んでゆく必要がある。効率の悪い事業や仕事については廃棄していくわけだが、単純に「儲からない」からといって他社に投げつけてしまうのは全く得策ではないと思うのだ。

その事業や仕事も、社会においては何らかの重要な役割を担っているわけで、自らの組織が「儲からない」からといって、あえて他の組織で「儲からない」事業にすべきではない。

よって、「儲からないので切り離すべき事業や仕事は何か?」という利己的な問いだけではなく、「他の組織に任せるべき事業や仕事は何か?」と問うことで、一気に手離れをよくすることができるはずだ。

事業売却や営業譲渡には必ずその事業の新たなる担い手となる買い手(顧客)がいる事を忘れてはいけない。我々にはそのためのマーケティングが必要なのだ。

アウトソーシング(外注)を検討する際も、同様の意思決定が必要となる。

当社で”なかなか利益が出にくい部品”の加工がある。当社の場合は比較的精度の高い部品を得意とするため、あまり高精度でない(単価も安い)部品の加工に貴重な設備を占有させてしまうと、利益が出にくいと同時に、お客様が当社の旨味を十分に味わいきれない状態が発生してしまう。

これは、自らの組織から見れば、「儲からないなぁ。」で済むかも知れないが、顧客や社会の側から見てみると直ちに改善すべき点になるはずだ。

よって、当社がまずすべきことは、今までその部品の加工をしてきた上で培った特有のノウハウを可能な限り”買い手側”に開示、その加工に必要な備品等も提供(又は貸与)、軌道に乗るまでの加工指導、等である。それらを検討して初めてその仕事が他の組織に売れてゆく(手離れする)と思うのだ。

中長期的に見て、”買い手側”にとって良い仕事にならないのであれば、社会のエコシステム(循環型生態系)は近い将来崩壊してしまうだろう。その悪影響はいつしか必ず自らの組織にも廻ってくるはずであり、こうした点にはそれぞれの組織が十分に注意を払うべきだと思う。

あまりにもこの点について我々は利己的になりすぎて、お互いの足を引っ張っていることにそろそろ気づかなくてはならない。儲からないからといって、”売り手”が棄てる事業や仕事に、いつまでも”買い手”がつくと思ったら、それは大きな間違いである。


Today's Questions.
Q:どの組織に、どの事業を任せるべきですか?
Q:そして、あなたの組織はどの仕事で強みを発揮すべきですか?

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11月12日”マネジメントの成果は5つの仕事で決まる。”
マネジメントの基本についての紹介です。明日もどうぞお楽しみに。

2009年11月10日火曜日

”現在行っていることの廃棄は体系的に行わなければならない。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、「体系的廃棄」について。すべての活動において、廃棄を目的とした定例会議を開く会社が紹介されている。

組織を生命体として捉えれば、我々は今行っている活動の代謝を高め続ける必要がある。そのためには自らを陳腐化し、ムダな贅肉は定期的にそぎ落とすことで、しなやかに環境に順応していかなくてはならない。

製造業やサービス業では生産性向上のために定期的に実施される「5S活動(Wiki)」というのが有名だが、”体系的廃棄”とはいわば、”知識労働における5S活動”とも言えるのかも知れない。

そして、5S活動の中でも「赤札作戦」という活動があるが、この赤札作戦が最も知識労働における5S活動の参考になるのではないかと思う。ここで簡単に説明しておきたい。

赤札作戦とは、「あるモノを、”いるモノ”と”いらないモノ”に仕分ける」全社的活動で、(方法は様々だが)あるモノ全てに赤札を貼り、一定期間内(1週間、1ヶ月、1年間)に使用したものの札を剥がしていく。期間を過ぎても札が残っているものは廃棄するか、使用頻度に考慮して置く場所を変更する、といったシンプルで効果的な活動だ。

ちなみに、赤札作戦に似た豪快な活動では、一旦工場内にあるモノを(設備も含め)全てを工場の外に放り出し、その時必要なモノだけをその都度工場内に持ち帰るという方法があるらしい。この活動をすると、殆どのモノが1ヶ月以内に工場に戻らず、多くの作業員も手持ち無沙汰になってしまったという話を聞いた。

では、いかにして知識労働における赤札作戦を実行できるか?上記のように、一旦全て止めてみるというのも手かも知れないが、あまりにリスクが大きいので、今日からでも始められる方法を考えたい。

知識労働はモノの様に存在自体に札を貼ることはできないので、意図的に可視化してやる必要がある。

①あらゆる活動のリストを作成する
(組織全体で時間を取られている順に並べる)

②リストの上から、以下の問いに照らし合わせていく。
Q:もし今やっていなかったとしたら、同じ方法で始めるか?
Q:やめたら、直ちに顧客に迷惑がかかるか?

③両方の答えがNOであれば、一旦止めてみて様子を見る。

一点、注意したいのは一部の階層の人間だけでこの決定をすべきでないという事だ。様々な階層の人の意見が参加できるよう工夫することで、組織全体としてその活動がどの様な意味を持つのか再認識することができるのだと思う。

また知識労働における活動は、長期間に成果を出す活動と、短期的に成果を出す活動が存在するので、短絡的に捨ててしまうのではなく、常にその辺り(長期、短期、その成果)の議論がなされていることに大きな価値があると思う。

最後に、リーダーは振り向かない。「じゃあ、今までは何だったんだ・・・・。」という過去の時間に浸かった台詞を口にせず、「どうやってこの空いた時間を活かしていこうか?」といった方向で考えよう。


Today's Questions.
Q:今の事業、やっていなかったとしたら、また参入しますか?
Q:今の顧客、付き合っていなかったとしたら、また取引しますか?

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11月11日”娘の嫁ぎ先を探すのであれば娘が最高の妻となる男でなければならない。”
事業売却のお話です。お楽しみに。

2009年11月9日月曜日

”未来は望めば起こるわけではない。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”も昨日に引き続き、「マネジメントー課題、責任、実践」からの抜粋で、今日の思考と行動に未来を折り込む大切さについて説明されている。

The future requires decisionsーnow. It imposes riskーnow. It requires actionーnow. It demands allocation of resources, and above all, of human resourcesーnow. It requires workーnow.(P.F. Drucker, "The Daily Drucker", p.343, Harper Business)

”未来”は、”今”、決定を必要としている。”今”、リスクを課している。”今”、実行を必要としている。”今”、リソースの分配(特に人材)を要求している。”今”、仕事を必要としている。(同上 中村克海訳)


”未来”と向き合うのは辛い。それは”今”を否定することになりかねないからだ。しかし、”今”とは異なる”未来”は望もうと望まざると、いつかは必ず組織の外からやってくる。

ならば、未来にはやみくもに逆らわず、身(組織)を委ねる事を楽しみ、合気道のようにその力を応用することを考えよう。ドラッカー教授も「変化はコントロールできない。できるのはその先頭に立つ事だけである。」としている。

考え方次第で”脅威”は”機会”になりうる。

昨日の展示会の話の様に、”すでに起こった未来”を察知するためには、少しだけ特殊なアンテナ(心構え)が必要だと感じている。それは、”起こっていること全てにラポールを取る”(8月31日の記事参照)というアンテナだ。

自らの事業の根底を揺るがすような”不都合な事実”であっても、”それはなるべくしてなっている。”と淡々と受け止め、粛々と”今”を修正し続けよう。


Today's Questions.
Q:今、なすべきことは何ですか?
Q:今、なさざるべきことは何ですか?

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11月10日”現在行っていることの廃棄は体系的に行わなければならない。”
有名な”体系的廃棄”に関する説明です。明日もお楽しみに。

2009年11月8日日曜日

”重要なことは、いかなる未来を今日の思考と行動に折り込むかである。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、未来のための戦略的プランニングにおいて我々が注意すべき点について説明されている。

ページのタイトル部分に”不確実性時代”とあるが、先の見えない現代において生き残るには”変化を読む眼”、すなわち”すでに起こった未来”を察知する能力がクリティカルといえる。

我々の身の回りには、やがてやってくる環境変化のヒント(氷山の一角)が散在している。そのヒントを感じながらも、いつまでも見過ごしていると、恐れていた変化の波に足をすくわれてしまうことになりかねない。

The question that faces the strategic decision-maker is not what his organization should do tomorrow. It is "What do we have to do today to be ready for an uncertain tomorrow?"(P.F. Drucker, "The Daily Drucker", p.342, Harper Business)

戦略的意志決定者にとって重要な問いは、「明日、組織が何を行うのか?」ではなく、「不確実な明日に備え、我々が今日しておかなければならないことは何か?」である。(同上 中村克海訳)


先週、興味深い”すでに起こった未来”を見た。場所は東京ビッグサイト。東京国際航空宇宙展に出展中の当社ブースは入り口付近にあり、会場に訪れたばかりの来場者を観察する機会を得ることができた。

ここで感じたのは、航空宇宙産業について全く知識のない来場者が非常に多かった点だ。来場者の服装や質問の内容から、それらの方々がどの辺りの業界関係者かを感じ取ることができた。

服装はスーツではなく、カジュアルなジャケットで、肩から鞄を肩から提げている。取引先を探すというよりは、学びに来ている雰囲気で、質問についても以下のようなものが多かった。

・どうやってこの様な(高精度な)部品を加工できるのか?
・設備はどんなものを使用するのか?
・航空宇宙産業に参入するにはどの様な資格が必要なのか?
・部品の単価は?
・多品種少量生産は儲かるのか?
・営業はどうしているのか?
・顧客と話し合いながら仕様を決めるのか? 等々

質問の全てに丁寧に答えた後、今度は逆に質問してみると、予想どおりその方々が新規参入を目論む自動車部品メーカーの社長さん達である事が分かったのだ。

なぜ彼等がこのような展示会に来るのかは容易に想像が付く。長引く不況と電気自動車の台頭により、自動車の販売台数だけでなく、自動車の部品数も数分の一になることが予想されている。

自動車部品メーカーの多くは売上の8〜9割以上を自動車部品の生産に充てているため、それらの部品が不要になってしまう事で、非常に多くの部品メーカーが廃業を余儀なくされてしまうことが予想されている。

今後の成長産業と言われている航空宇宙産業への参入を目指すのはある意味、当然と言えるだろう。

同展示会の体験から学べる未来のワースト・シナリオを想定してみたところ、「数年以内に(これまでは付加価値の高かった)航空宇宙部品の業界にも熾烈なコスト競争が始まり、5年後には深刻な値崩れを起こしている。その時には利益が出る部品はごくわずか。」といった恐ろしい光景がある種、自動的に見えてきた。

この仮説を踏まえ、今日の組織の活動を変化の波に耐えうる体制に変化させなければならない。このケースでは、新たな人脈作りや加工の高度化、他産業への進出によるリスク分散等だ。

”知覚する”ことはアンテナさえ張れば誰にでもできるが、そこで感じたことに向き合い、責任を持って行動に変えられるかが、組織の環境順応力が問われる重要なポイントなのだと思う。


Today's Questions.
Q:目の前で起きている”すでに起こった未来を”感じないでいようと思っていませんか?

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11月9日”未来は望めば起こるわけではない。”
本日の内容とも重なりますが、重要なので。明日もお楽しみに。

2009年11月7日土曜日

”荒野にしがみつく人の多くは屍しか残せない。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”も、「非営利組織(Managing the Non-Profit Organization)」からの抜粋で、”しがみつかない”戦い方の大切さについて描かれている。

このページをより深く理解するためには、9月3日の投稿をご参照いただきたい。

この内容に、「リーダーは時として、部下達と共に戦っていた”戦場”に背を向け、一人丘の上に向かわなければならない。」と書いた。体裁の良い現実逃避をしながら、部下と戦場で同じ戦略を継続することで、”組織の失明”を招く恐れがある。

この話は、”リーダーが率先して戦略の陳腐化を行わなければならない”という意味につながる。

(同じ戦略に)”しがみつく組織”に共通して言えるのは、ワンマン経営や上司によるトップダウン型の風土だと思う。大抵は”意見を言いにくい(または言ってはならない)風土”が定着した結果ではないだろうか。

こうした組織では、一人(もしくはごく一部)の人間で戦略を練っているため、少ない知恵でやっとのことで編み出した戦略を、あたかも芸術品の様に”愛でる”傾向がある。

「(自分が考え出した)この戦略が間違っているはずはない…。」といって、部下や周りの忠告を一切受け付けない雰囲気をつくるのに長けている。戦略を変えることなく、ついには強引にスタッフや顧客を変えようとしてしまうのだ。

これは、実は組織のどの階層でも日々発生しており、我々にとって、組織の全員からこの様な偏愛を切り離すことは極めて重要な仕事である。 ”作品”への思い入れが強いことによって、組織の活動が急速に社会から乖離していく危険性を持っているからだ。

そもそも戦略さえも成果を生むための作られる”ツール”でしかない。それを改良しても想定した効果が見られないのであれば、”生みの親”が率先して戦略を破壊し、白紙から組み直す勇気を持たなければならない。

もう、一人だけの脳で考えるのを止めよう。より多くの人の脳を結集してアイディアを集める一方で、より本質的な問題点(タブー)を笑って話せる環境を育もう。

戦略の失敗は、単に一つの”実験の失敗”に過ぎない。「上手くいかない事が分かったことがラッキー。」と思い、「はい次〜。」という気軽な感覚で次の戦略に躊躇なく移行できる組織を育もう。


Today's Questions.
Q:あなたの組織はどのような戦略にしがみついているでしょうか?

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11月8日”重要なことは、いかなる未来を今日の思考と行動に折り込むかである。”
未来をいかに今日の意思決定に反映させるか。明日もお楽しみに。

2009年11月6日金曜日

”聖アウグスティヌスは奇跡を求めて祈り、成果を求めて働きなさいといった。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、「非営利組織の経営(Managing the Non-Profit Organization)」からの抜粋で、「戦略(Strategy)」についての説明だ。

このページでドラッカー教授は、使命(Mission)や計画(Plan)は善意(善き決意)にすぎず、成果を生むためには戦略が不可欠である、と言っている。

「計画が知的な遊びに終わっていることが多いことに気づいた。」(P.F.ドラッカー)

そして、”計画(Plan)”という言葉を使うことによって、それを作ること自体が仕事になってしまう危険性についても触れており、あえて行動を前提としてイメージできる”戦略(Strategy)”という言葉を使う様になった、といった説明であった。

「戦略であれば、期待するものではなく、働くためのものであることがはっきりしている。」(P.F.ドラッカー)

これは個人的にも実体験として経験がある。以前、中小企業向けにITコンサルをしていた折、その組織の社長と幹部の方々に対してオーダーメイドした企画をプレゼンする機会が多かった。

その際、開業当初は資料のタイトルでよく悩んだ。なぜなら、感覚的にだが、「○○○○のご提案」というタイトルで企画書を出すと、なぜかお客様(特に幹部社員)からダメだしをされ、契約に至らない事が多い気がしたのだ。

そこで、「○○○○戦略のご提案」と、”戦略”という言葉を付け加えてみたところ、たちまち契約までが円滑になった。

まずこちら側の資料の作り方が変わった。少ないリソースで確実に成果を出せるようなシンプルな資料にすることができたのを憶えている。そして、プレゼン時の雰囲気も変わった。

社長始め、幹部社員が「ここについては誰に担当させよう。」「ここについては、こういう風に変えてやればうまく行くはずだ。」と、契約がまだ決まっていないにも関わらず、既にその戦略を実践しているかのように前向きな意見が交わされるようになった。

コンサルタントという立場は、いかに顧客の側になれるかが常に課題となるが、この「戦略」という言葉を用いることによって、組織の一員として成果を生むためのアイディアを惜しみなく提供することができ、それが顧客にも伝わったのかもしれない。

使命や計画という言葉だけでなく、小さなプロジェクトであっても戦略という言葉を使ってみるだけで、全員参加の活動が促され、今まで見えなかった何かが見えてくるのではないだろうか。


Today's Questions.
Q:戦略がありますか?
Q:組織のメンバーはそれを知っていますか?

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11月7日”荒野にしがみつく人の多くは屍しか残せない。”
”しがみつかない”戦い方についての説明です。明日もお楽しみに。

2009年11月5日木曜日

”未来のための予算は好不況にかかわらず一定に保つ。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、「明日を支配するもの(Management Challenges for the 21st Century)」からの抜粋で、”未来予算(Future Budget)”についての説明だ。。この中でドラッカー教授は好不況に関わらず、未来の顧客創造に繋がる活動のため、一定の予算を別枠で確保しなさい、としている。

未来の顧客創造に繋がる活動とは、主にマーケティング&イノベーションを指すと考えて良いだろう。新たな顧客を見つけ、その顧客が必要とする商品やサービスを生み出すプロセス全体がそれにあたる。

記憶が定かではないが、オーディオブック「P.F.ドラッカーと考える21世紀の経営」(もしくは「日本企業への警告」)のインタビューにおいて、インタビューアーが「未来に対する予算の重要性について本で説明されているが、その額をどの様に決定したらよいか?」という問いを投げかけた。

ドラッカー教授は「未来への投資額は、最低でも、”過去行った事”に対して支払わなくてはならない金額を上回る必要がある。」といった回答をしていた。

注:上記の正確なソースについては後日追記予定。

残念ながら弊社では今のところ、これについての取り決めが全くされておらず、昨年末からの不景気の中、どのコストを削減し、どこを削ってはならないのかが明確でなかったので、早々に検討していきたい。

さて、”未来予算は、過去に対して支払う金額を上回るべきだ”という言葉で思い出すことがないだろうか?

先日登場した、ドラッカー教授が最も重要視する”時間”の使い方についても、彼は同様の説明をしている。”未来の時間(明日をつくる時間)”と”過去の時間(過去に行ったことに対処する時間)”の関係に非常に似ている。

そして、時間と金…となると、ひょっとすると経営に関わるすべてのリソース(経営資源)について、同じ事が言えるのかも知れないと感じた。

一般的に言われるリソースは、ヒト・モノ・カネの有形資産である3要素が挙げられるが、最近ではその他の無形資産となる情報・知識・時間・技術・知恵・ブランド等が加えられてきた。

自らの組織における、これら全てのリソースの”未来対過去配分”をそれぞれ考えてみると、その大半が赤字である事がよく分かる。

本日のページを読み、資金だけでなく、それぞれのリソースの、いわば”未来配分”を別枠で確保した上で、明日に繋がる意思決定をしていく重要性に気付くことができた。


Today's Questions.
Q:未来に繋がる別枠予算を確保していますか?
Q:どのリソースに”未来配分”が欠乏していますか?その結果は?
Q:どのリソースに十分な”未来配分”が確保されていますか?その成果は?

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11月6日”聖アウグスティヌスは奇跡を求めて祈り、成果を求めて働きなさいといった。”
戦略についてのお話しです。お楽しみに。

2009年11月3日火曜日

”情報は、事業の定義が前提としているものの有効性を知るために必要とされる。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、組織が必要とする情報についての説明だが、読んでも少し難しいページだ。

原著を見てみると、”Gathering and Using Intelligence(情報の獲得と活用)”といったタイトルになっており、ドラッカー教授は、情報は組織の戦略における”Assumptions(仮説)”を検証するために必要であり、必要とあらば外部の専門家を使うと良い、としている。

では、この場合の”仮説”とは何か?仮説を立て、検証する力、いわば”仮説力”というのは組織運営において非常に重要な意味を持つように思う。我々は「これをこうしたら、何にどの様な影響が出てくるだろうか?」といったシミュレーションを常に続けなければならない。

今日行う我々の意思決定は、明日にはあらゆる物事を変化させている。もし明日、今日と同じ情報を前提に意思決定した場合、誤った判断に繋がる可能性が高まるからだ。

端的に言えば、「自組織の”今”に対する、我々の認識がずれていないか?」ということを生の情報を元に検証しなければならないということだ。

ドラッカー教授は、以下3種類の仮説を確認するよう、勧めている。

①社会、市場、顧客、技術等、事業に関わる外部環境の仮説
②組織特有の使命(Mission)に関わる仮説
③使命達成の為に必要とされる、自らの組織の強みに関わる仮説

これらの情報は社内にいるだけで見極めることは至難の業だ。脅威は常に組織の外からやってくる、という言葉からも分かるように、外部の情報に敏感になり、”仮説力”を大胆に発揮することで、想定外なリスクを低減していけるのではないだろうか。

また、組織を通じて関わるすべての方と対等な人間関係を築くことで、外部に高精度な危機察知センサーを持つこともできる。組織の使命をそれらの人に理解していただき、何かそこに影響を及ぼすような情報があれば、即座に届けてもらおう。

組織を守り発展させることができるのは、結局は「人」なのだ。


Today's Question.
Q:組織の置かれた”今の状態”を正確に捉えていますか?
Q:どの様にすれば、より正確に把握できますか?
Q:だれがその情報を持っていますか?

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11月5日”未来のための予算は好不況にかかわらず一定に保つ。”
明日は内容が重複しますので、お休みとします。明後日は未来予算について。どうぞお楽しみに。

2009年11月1日日曜日

”象はノミと違って身長の何倍も飛び上がることはできない。”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”では、選択と集中についての説明がなされている。組織においても選択と集中がいかに大切であるかという点について再認識させる内容だ。

組織は一時にわずかの仕事にしか取り組めない。組織構造やコミュニケーションの工夫ではどうにもならない。組織では集中力が鍵である。 (P.F.ドラッカー著、上田惇生訳「断絶の時代」より、ダイヤモンド社)


”組織”というと、構造を工夫することで、一度に様々なことを平行して進められる様に思えるが、実際は非常に難しい。取り組みを増やすことで、リソースの集中投下やフィードバックが手薄になってしまい、いつまでもなかなか満足いく成果を上げることができない。

「今後、半年間のテーマは○○で、これに全員で集中しよう。」と伝えた方が、よほど分かり易いし、少しずつでも確実に前進できる様だ。ただそれ故に、何を最優先させるのかは非常に重要だ。

ドラッカー教授は「経営者の条件」の中でも、「成果をあげるための秘訣を一つだけ挙げるならば、それは集中である。成果をあげる人は最も重要なことから始め、しかも一度に一つのことしかしない。」(P.F.ドラッカー著、上田惇生訳「経営者の条件」より、ダイヤモンド社)とし、「時間の収支は常に赤字である。」といかに限られた時間に対し、やらなければならないことが多いのかを冷静に分析している。

みなさんは、「ドラッカー 365の金言」と原著「The Daily Drucker」の表紙には”砂時計”の絵が描かれているのにお気付きになっただろうか。そしてその砂は下に落ち始めている。表紙をめくって、最初に目に飛び込むのは、空白のページ中央に一言で記された、「汝の時間を知れ(Know Thy Time.)Peter F. Drucker」というメッセージだ。

タイトルや装丁、ページ構成など、この本の全てにおいて、ドラッカー教授が人生を通じて我々に本当に伝えたかったことを”集中”させることに成功している。

自らの人生において、あと何回、”選択と集中”ができるのかを考えると、現在の取り組みが本当に”最優先で選択し、集中すべき”活動なのかを真剣に再考する必要があると感じた。

Today's Questions.
Q:何を選択し、集中していますか?
Q:優先されるべきでない活動にリソース(資源)を浪費していませんか?

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11月3日”情報は、事業の定義が前提としているものの有効性を知るために必要とされる。”
明日はお休みさせていただきます。明後日の更新をお楽しみに。