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2009年10月19日月曜日

”経営陣が大金を懐に入れつつレイオフを行うことは社会的にも道義的にも許されない”(P.F.ドラッカー)

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、経営陣の報酬について。資本主義といえども、経営者が一方では人をクビにしながらも、所得格差を20倍以上つけることの愚かさ、危険性について説明されている。

組織内の所得格差を二〇倍以上にするなと何度もいってきた。これを越えると憤りとしらけが蔓延する。(中略)人間として生き、人間として遇されるということの意味は、資本主義の金銭的な計算では表せない。金銭などという近視眼的な基準が、人生と生活の全局面を支配するなどということは許されざることである。(P.F.ドラッカー著、上田惇生訳「ネクスト・ソサイエティ」より、ダイヤモンド社)


グローバル企業の役員報酬について調べてみると、欧米の主要企業における役員報酬はストックオプション等も含め、一般的な社員の実に200倍以上にもおよぶことが珍しくないとのことだった。

多くの欧米企業では、オーナーと経営責任者(CEO)が異なり、優秀なCEOを高額な報酬を餌に迎え入れることで、短期的な利益の最大化に重きを置いている。また従業員よりも株主が重要であるとして、当たり前のように人員削減しながら利益を拡大させることにより、株価を上昇させ、当然自らの報酬も上げることになる。

一般社員との所得格差は広がるばかりで、この辺りが本当の意味で問題視されるようになってきたのはつい最近のことだと思う。

一方、日本の経営者はオーナーの場合が多く、海外に較べ、経営者の流動性が極めて少ない。また社員、株主、取引先等のステークホルダーの他、社会との調和を考慮すると、報酬を上げすぎると諸問題に繋がることを知っているし、そもそも欧米企業の様な高額な報酬を望む経営者自体、少ないのではないだろうか。

日本の経営者について、この辺りが海外の経営者にとって全く理解の及ばない神秘であり、日本企業の強みの一つだと思う。

2006年の時点で、GMの役員報酬が約7億に対し、トヨタの役員報酬は約8千万程度。この差は大きいが、トヨタ生産方式を学ぶと、この額にはある意味、納得できる。トヨタでは多能工化を促し、限定した専門家が育つことを良しとしない。よって優秀な1人の人材よりも一般社員10人による知恵を大切にする。

意思決定の機会を分散することで、組織で結論を見いだすからだ。

日本の中小規模の企業においても、オーナー経営者のリスクが大きいからといって、組織内にあまり大きな所得格差を作ってしまうと、その分運営に悪影響が発生すると思われるので、十分に注意したい。また、いかに自らの報酬額を内密にしようと努力してもあまり意味がないと考えた方がよい。

より正しい意思決定のためにも、自らの報酬額には一定の上限を設けておくのが賢明だ。

最後に、少し極端な例かもしれないが、参考までに新渡戸稲造の「武士道」より、私が好きな部分を引用して終わりにしたい。

どんな仕事においても報酬を払う今日のやり方は、武士道の信奉者の間では広まらなかった。なぜなら、武士道は無報酬、無償であるところに仕事の価値があると信じていたからだ。精神的な価値にかかわる仕事は、僧侶にしろ、教師にしろ、その報酬は金銀で支払われるべきものではなかった。それは価値がないからではなく、金銭では計れない価値があったからである。(新渡戸稲造著、岬龍一郎訳「武士道」PHP研究所


”富は知恵を妨げる”という知恵は、武士の間では常識だったのだ。


Today's Questions.
Q:あなたの報酬が組織にしらけを生んでいませんか?
Q:報酬の他にも、あなたの特権が組織の知恵を妨げているとしたら、それはどの特権ですか?

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10月20日”利潤動機は物に対する支配欲を満足させる”
利益至上主義が、人と物に対する支配を加速させる、というお話です。お楽しみに。

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