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2009年9月30日水曜日

”個としての仕事ぶりと全体への貢献の双方を評価する報酬システムが必要である。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、報酬システムについての説明。報酬は価値や質のような無形のものを公平公正に数えられる数字に置き換えるという、非常に複雑な作業を伴うため、シンプルな報酬システムで運用し、それを常に変化させることが大切であると説いています。

繊細な内容だと思うので、原著「The Daily Drucker」から引用したい。

But the money in any compensation system expresses the most intangible, but also the most sensitive, values and qualities. No attempt at a "scientific formula" for compensation can therefore be completely successful.
(P.F. Drucker, "Manegement: Tasks, Responsibilities, Practices", Harper Business)

あらゆる報酬システムにおいて、”お金”は、価値や質という、最も掴み所のない無形のものであると同時に、最も繊細なものである。この事から、報酬システムに”科学的公式”を見いだす試みが、完全に成功することは無いと言える。(同上、中村克海訳)


我々は、何事にも”必勝法”や”勝ちパターン”を見いだし、そこに根拠のない安心感をもって依存してしまいがちだ。対象が複雑で有機的なものに対しては、なおさら確固としたフォーミュラ(公式)を当てはめたくなる。

先日、8月31日”マネジメントが変革と継続のバランスを実現する。”を書き終えた後に妻がヒントをくれたが、「綱渡りをする人は、常に”不安定”でないと”安定”しない。」ということだ。

常に揺れ動く綱の上では、安定したいがために体を硬直させると、たちまちバランスを崩し、縄から落ちてしまう。綱の上で目指すべきことは、”動かない安定”ではなく、”わずかな不安定状態”なのだと思う。僅かに崩れたバランスを瞬時に察知して対応することが大切だ。

報酬システムや評価システムにも全く同じ事が言える。何年も同じ方法で続けるのは賢明とは言えない。毎年、小修正を加えていくべきだ。

つまるところ、報酬システムが実際に扱うのは、”お金”ではなく、”心”だ。”算出”のためではなく、”認める”ために報酬システムは存在する。

心の小さな変化を、瞬時に察知し、大きくバランスを崩す前に対処する。だからこそ、人の評価において、我々が行うべき最も大切な事は、被評価者本人による、”自らと正面から向き合い、自己管理する”機会の創出なのだと思う。

推奨Post:
8月31日”マネジメントが変革と継続のバランスを実現する。”


Today's Questions.
Q:評定を伝えたとき、被評価者はどういう表情をしていますか?
Q:報酬を過剰に意識させる制度になっていませんか?

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10月1日”神々が見ている。”
明日は、完全主義についてのお話です。お楽しみに。

2009年9月29日火曜日

”教会を建てていると言えることが重要である。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”では、「マネジメント[下]ー課題、責任、実践」に登場する、有名な三人の石切職人(石切り工)の話が紹介されている。知らない方のために念のため、ご紹介しておこう。

三人の石切り工の昔話がある。彼らは何をしているのかと聞かれたとき、第一の男は、「これで暮らしを立てているのさ」と答えた。第二の男は、つちで打つ手を休めず、「国中でいちばん上手な石切りの仕事をしているのさ」と答えた。第三の男は、その目を輝かせ夢見心地で空を見あげながら「大寺院をつくっているのさ」と答えた。(P.F.ドラッカー著、上田惇生訳「マネジメント[下]ー課題、責任、実践」、ダイヤモンド社)


ドラッカー教授は、「第三の男こそ、真のマネジャーである。」としている。

第一の男は、仕事で何を得ようとしているかを知っており、事実それを得ている。一日の報酬に対し一日の仕事をする。だがマネジャーではない。将来もマネジャーにはならない。問題は第二の男である。熟練した専門能力は不可欠である。(中略)しかしスペシャリストは、たんに石を磨き脚柱を集めているにすぎなくても、重大なことをしていると錯覚しがちである。(同上)


8月22日に起業家戦略として”専門技術戦略”の危険性について触れたが、この戦略を選んだ組織が「第二の男」になってしまい、遅かれ早かれ顧客から見放されてしまうといった光景は、我々の周りで頻繁に眼にする。

ここで少し例え話で考えてみたい。

「国際石切り加工技術展」という見本市が東京ビッグサイトで開催される事になったとしよう。三人の石切り工に告知の招待状を送ったら、それぞれはどの様に対応するだろうか?

第一の男は、「もっと楽に稼げる機械があるのなら、行ってみてもいいかな。」と思い、会場に向かうかも知れない。

第三の男も、「将来、大寺院を訪れる誰もが心奪われるような、美しい加工ができるノウハウに出逢えるかも知れない。それに、将来の顧客を見つけることもできるかも知れない。」と言いながら意気揚々と足を向けるだろう。

第二の男はどうか?私のイメージでは、招待状の封筒も開けず、既に破り捨ててしまっている。

こうして、9月25日にも触れた、外部の感覚器官の能力が考え方一つで大きく変わってきてしまう。使命や事業の目的を明確に伝えることで、各個人が担うべき貢献についても、本人が一言で説明できる状態にしておく必要がある。


Today's Questions.
Q:あなたは今、何をしていますか?

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9月30日”個としての仕事ぶりと全体への貢献の双方を評価する報酬システムが必要である。”
報酬システムのあるべき姿についてのご紹介です。明日もお楽しみに。

2009年9月28日月曜日

”マネジメントに携わる者は石臼に鼻を押しつけながら丘の上を見なければならない。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、短期と長期のバランスについての説明となっている。タイトルの比喩は、「今、必要とされる事を懸命に実行しながらも、将来の姿をイメージし続けなければならない。」という意味だろう。このページでドラッカー教授は、次の様に説明している。

「今日のために明日犠牲となるものについて、あるいは明日のために今日犠牲になるものについて計算しなければならない。それらの犠牲を最小限にとどめ、いちはやく補わなければならない。」(P.F.ドラッカー著、上田惇生訳「マネジメントー課題、責任、実践」より、ダイヤモンド社)

”マネジメントに携わる者(原著では"manager")”というのはあらゆる”上司”を指す。組織においては全ての人が”現在”を見ているが、どの未来を見ているのかは、その立場によって異なる様に思う。

勿論、組織によって様々だと思うが、課長が1〜3年の未来を見つめていたら、部長が3〜5年の未来を見て、その上司は5〜10年先を見る、といった風に、上の立場になるほど、遠い未来を見ながら日々の意思決定を行う必要がある。

この辺りが、職位によって意見が異なり、衝突を起こす大きな要因かも知れない。

長期的な視点から、トップが必要だと思い、現在の方向性の修正を試みると、トップ以下の全員が問題を提起し、それぞれが異なる意味で反発が発生する、というのは日常茶飯事の事ではないだろうか。

”全員参加”や”情報共有”を理想とする現代の組織運営において、この職位ごとの説得作業にかかる時間は膨大だ。そんな時、「職位によって、『現在〜(  )年後まで』という具合に、見なければならない時間のスパンが異なる。」という、意思決定の役割分担について話すと良いかも知れない。


Today's Questions.
Q:トップが組織の一〇〇年後を意識していますか?
Q:”現在”を何とかする事だけに逃避していませんか?

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9月29日”教会を建てていると言えることが重要である。”
かの有名な”石切り職人”のお話です。明日もお楽しみに。

2009年9月26日土曜日

”データ化できないものを考えなければならない。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”では、データ化できないもの、定性的な分析の大切さについて触れられている。表やグラフなど、我々は良くできた”データ”を眼にすると、それに依存してしまいがちだが、ドラッカー教授は、そうした定量的な情報だけに捕らわれるのは怠慢である、と伝えている。

「データ化できないものを考えなければならない。データ化できないものについての配慮を忘れたデータ化は、組織を間違った方向へ導く。ところが、データ化に成功するほど、それらデータ化したものにとらわれる。したがって、優れたデータを手にしているように見えるほど、マネジメントが行われていない恐れがある。」(P.F.ドラッカー著、上田惇生訳「マネジメントー課題、責任、実践」、ダイヤモンド社)

この一ヶ月、当社では半期に一度の人事評価を実施してきたので、そこで感じたことを紹介したい。

人事評価といっても、約3年前に導入したこの評価システムの評価基準は金額やパーセンテージなど、数値を基本とする定量的な視点による評価の要素は、今や殆ど無くなってしまった。

評価の仕組みを煮詰めれば煮詰めるほど、定量的な評価基準のもろさが露呈してくるのだ。数字は、無数の異なる要因が複雑に絡まり合って生まれた結果であり、その数字に最も近かった者だけを高く評価するのはあまりにも馬鹿げている、ということが分かったのだ。

組織を体に例えれば、心拍数だけを見て、心臓を褒める人はいないはずだ。

勿論、各評価項目に対し、0〜5の評定(点)を決めるわけだが、それを決め方は至って定性的(感覚的)な視点に変化してきた。言葉ではなかなか説明しにくいが、被評価者の以下のような変化を他部署の上司達も含めて議論する「評価調整会」という場を作っている。

  • 自分の良かった点(○)、カイゼンすべき点(!)を客観的に自己評価し、なされるべきことに向き合えているか?(また、毎月の”振り返りシート”がバランスよく書けているか?)
  • 結果がどうであれ、踏み込めているか?(リスクを負って挑戦できているか?)
  • 部署を越えた視点で発言、行動できているか?

上記はほんの一部だが、被評価者の成長を、こうした”感覚的な”視点によって、上司全員が集り話し合う。自己評価や直属の上司による評価をプロジェクタで映しながら、丸一日議論する。そして、ここでは”脱線”も自由だ。

この調整会には大変な労力が必要だが、これによって、会社の方向性、上司(育てる者の)の責任、そこで働く者に求められる心構え、与えるべき機会、個々の心境の変化等を組織全体で一辺に共通認識することが可能になった。

また、半年に一度、この評価期間が訪れる度に調整会の後に評価者と「前回(半年前)と比較し、今回の評価で変わったこと」について必ず話し合うことにしている。

今回、全員で驚いた変化は、調整会の時間が大幅に短縮できたこと。これは、被評価者一人ひとりの「自己評価の精度の高さ」の賜物であった。従来は上司がいかに正確に部下の評価をするのかを懸命に工夫していたが、昨年より「いかに自分自身の成長と向き合うか?」というテーマで自己評価の精度向上を推進してきた。

結果、上司達による管理の時間が大幅に短縮することができ、被評価者である部下達もより主体的な目標設定や自己管理ができるようになったのだ。

人事評価に限らず、当社で行ってきたカイゼンの多くは、こうした定性的視点から仮説を立てて取り組んで得られた結果が多い。残業や不良率の大幅削減において、定量的アプローチだけでは多少のカイゼンは可能だろうが、より根本的な部分にメスを入れ、修正を加えるには右脳の積極的活用が不可欠であると信じている。


Today's Questions.
Q:あなたの組織は定量的分析と定性的分析、どちらを重視していますか?
Q:数値データなしに行動しようとする人を責める組織になっていませんか?
Q:定性的な事柄を数値として把握するには、何を集計すれば良いですか?

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9月28日”マネジメントに携わる者は石臼に鼻を押しつけながら丘の上を見なければならない。”
明日はお休みをいただきます。明後日は、短期的視点と長期的視点のバランスについて。どうぞお楽しみに。

2009年9月25日金曜日

”今日の組織が最も必要としているものが外部に向けた感覚器官である。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、組織の外部に向けた感覚器官の重要性について触れられている。組織の内部にはコストしか存在せず、成果は常に組織の外に存在するため、われわれは常に外部を意識しつづける必要がある。

本日のページのアクション・ポイントで、ドラッカー教授は以下の5つの要素を常に意識し、組織が体系的に知覚する仕掛けを作る必要がある、と伝えている。

①顧客満足度
②既存顧客以外の購買行動(buying habits)
③技術革新
④競争相手
⑤政府の動向

理屈の上ではこれをよく理解しつつも、社内のことに対応するだけで一日はあっという間に過ぎるし、社外の変化からは目を背けてしまいがちだ。なぜこうしたことが起きてしまうのだろう。

以前、>SWOT分析(Wiki)を試みて感じたことだが、”内的要因”とされる、S(強み:Strengths)とW(弱み:Weaknesses)については、一旦列挙すると、それが数ヶ月で大きく変化することは珍しい。しかし、”外的要因”とされる、O(機会:Opportunities)とS(脅威:Threats)については、日々、新たな情報を得るごとに刻々と変化している。

インターネット等、情報インフラの高度化に伴い、絶対的な情報の量の増加と伝達速度が急速に向上したため、”外部変化による事業の陳腐化”もそれと同様に速度を上げている。

しかし、外部の変化と向き合うには大きな勇気が必要だ。それは今までと異なる行動、時には今までと正反対の行動を求められるからだ。これまで必死に努力してきた仕事を、今日入手した情報によって、手放すことを決断しなければならない可能性もある。

よって、ことに”直ちに行動の変化”を余儀なくされる情報には「見ざる、聞かざる、言わざる」の姿勢で流してしまいがちだ。だからこそ、これが組織の命取りになってしまう。

このような外部の事実を、たった一人で受け止めるのは不可能に等しいだろう。組織として、生き残りたいと思うのであれば、問題を気軽に話し合える環境をトップが率先してつくり、より多くの勇気ある人間で外に目を向け、社会に必要とされるままに組織を順応させていけるよう、精進したい。

ご存じの通り、ドラッカー教授は、「現代の経営(ダイヤモンド社)」において、「企業の目的は顧客の創造であることから、企業には2つの基本的な機能が存在することになる。すなわち、マーケティングとイノベーションである。」と説いている。

マーケティングは”外部を知覚すること”、イノベーションは”内部を変革すること”に繋がるのだと思う。


Today's Questions.
Q:外部を知覚し、内部を変革する仕組みが整っていますか?
Q:顧客の生の声に触れていますか?
Q:顧客はあなたの組織やサービスを本当に満足していますか?
Q:顧客の購買方針の意思決定方法は何を見本にしていますか?
Q:顧客はどの様にして新たな情報を入手していますか?
Q:機会と脅威に関わりそうな展示会に出向いていますか?
Q:競争相手についてどの程度知っていますか?

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9月26日”データ化できないものを考えなければならない。”
データ化できるものと、できないもの、両方を感じ取れる組織にならなければなりません。お楽しみに。

2009年9月23日水曜日

”データに意味があるかないかが最大の問題である。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、データ収集の難しさについて紹介されている。様々な形でデータの集積が可能になった一方で、「人の動機付けに繋がらない、無駄なデータ」が増えていることを危惧した内容だ。そのため、本日のアクション・ポイントで、ドラッカー教授は、「マネジメントに使用しているデータの再点検」を示唆している。

確かに、昨今、あらゆる事象を簡単にデータ化したり、グラフ化できるようになったため、現場に目をやると、あまりに不必要とも思われる集計に、膨大な時間を割いている光景を目の当たりにする。そして、最終データ(数字やグラフ等)の算出方法を確認すると、非常に信憑性の低い数字が基礎データになっている場合も多く、

「今まで、何時間この無意味な作業に時間を割いてきたのだろう…。」

と愕然としてしまうことも多い。
みなさんにも似た経験があるのではないだろうか。

(これは当社でも未だ徹底できていないが、)こんな時は、思い切って全社的な「データ処理の棚卸し」をしたい。全社的に行われているデータ処理を廃止、簡素化、方向修正などを施すことによって、体脂肪率を大幅な低減を狙うのだ。

しかし、この”カイゼン活動”には、スタッフの大きな抵抗が伴うことも付け加えておきたい。なぜなら、それだけの大きな時間と労力がそこに割かれてきたからだ。そのデータ処理があまり役に立たなかった作業だとしても、本人にはかけがえのない仕事だったはずなので、くれぐれも慎重に着手することを忘れてはならない。

ここで最も大切なのは、

「組織に、より多くの未来の時間(明日をつくる時間)を確保するため、なるべく時間に余裕を持ちたいので、あなたも協力して欲しい。」

という前向きなメッセージを最後まで貫くことを自分に誓わなければならない、ということだ。

よく、あまりに無駄なデータ処理を発見したからといって、鬼の首を取った様に「見てみろ!私の言ったとおりだ。こんな無駄な事ばかりやっていたじゃないか。」とはしゃぐ上司がいるが、無論、部下の責任は上司にあり、本当にカイゼンするのが目的であれば、こうした態度は全く賢明ではない。

第一、似たような問題は組織全体に山ほど眠っている。氷山の一角を見つけては一喜一憂してはならない。上司がこうした軽率な言葉を発した瞬間、全てが台無しになってしまい、このカイゼン活動は永久に葬られることになる可能性が出てくるのだ。

もし問題が見つかったら、今回、それを見つけられたことに「(その問題に)やっとお会いすることができました。」と、まずは感謝する必要がある。

さて、話を元に戻すが、「データ処理の棚卸し」といっても、以下の様なデータは、まずは一旦対象から除外する必要があるだろう。

A)法的に義務づけられたデータ
B)顧客との間で約束が交わされたデータ

「データ処理の棚卸し」の手法は、基本的にはドラッカー教授の唱える「体系的廃棄」と同様だ。まずは、やめることから考える。社内のデータ処理を全てリストアップし、大きな時間が割かれているものから、以下の手順でカイゼンを進める。

1)まず、やめてしまったら何が起きるか?

を確認する。これを確認するプロセスにおいて、次の

2)この活動の目的は何か?

が、ある意味、自動的に明らかになってくると思う。データ処理の目的(集計の狙い)が明確になったところで、まずは今までのデータ(グラフ等)を一旦、横に伏せ、この先はこれを見ないで次のステップに進もう。

3)「5つの質問」と照らし合わせる

飛躍すると思われるかも知れないが、これが私の経験上、最も近道だと感じている方法だ。組織全体としての目的を改めて見つめ直すことで、個々の行動の動機付けを探すことができるからだ。

 ①われわれの使命は何か?
 ②われわれの顧客は誰か?
 ③顧客にとっての価値は何か?
 ④われわれの成果は何か?
 ⑤われわれの計画は何か?

注:「5つの質問」に馴染みのない方は、ぜひこの機会に当サイトから「経営者に贈る 5つの質問」を注文していただきたい。たった百ページの本が、自らの行動を大きく変えることに驚くはずだ。

このように、上の①〜⑤を順に辿ることで、先程の2)「データ処理の目的」が、いまいち組織の使命達成にリンクしていない事がうっすらと見えてこないだろうか。(個人的な経験では、9割以上のデータ処理が廃止、大幅な修正等の方向転換が必要となる。)

4)どの様にすれば、より大きな成果を生むことができるか?

を次に検討する。過去に行った活動の集計に時間を割くのではなく、今後の活動に対しての時間に変えてゆく。結果として見いだされる活動が、「データ処理」でなくなってしまうことさえあるが、その場合は、上司が勇気を持って本人にやらせてみよう。

本人には、その後の経過を逐一報告してもらい、細かな修正を加えながら、新たな活動を失敗させぬよう、上司が見守ることが大切だ。本人にもカイゼンのメリットが見え始めたら、その他の仕事にも同様の見直しができるよう、気軽に相談できる環境を用意しよう。

以上のように、われわれは常に「データ処理に組織全体が束縛されてしまう」ことを避けるため、自らの組織を観察し続けなければならない。定期的に棚卸しを行うことで、少しずつでも未来の時間(明日をつくる時間)増やしていけるのだと思う。


Today's Questions.
Q:より大きな問題や無駄を気軽に話せる雰囲気がありますか?
Q:組織の使命達成に必要なデータを集計できていますか?
Q:明日のためのデータ処理が行われていますか?

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9月25日”今日の組織が最も必要としているものが外部に向けた感覚器官である。”
明日の内容は本日と重複しますので、お休みさせていただきます。次回は、「外部の世界に敏感になりましょう。」という内容です。お楽しみに。

2009年9月22日火曜日

”問題が起こったときに手を貸せないのであれば意思決定に関与してはならない。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、高齢の役員について注意すべき点が紹介されている。この中でドラッカー教授は、60代半ばを越えた役員はマネジメントの責務から解放する必要がある、と伝えている。今日の意思決定の結果が現れる数年後、その場にいない可能性がある役員は、意思決定に関与すべきでないという意味だ。

また、高齢の役員は独立して行える専門家としての仕事(助言、教育、基準の設定、紛争の解決等)に就かせるべきとも示唆している。

役員の定年についての妥当性は広く語られていると思うが、それが一体なぜなのかを問われることはあまり無い様に感じるので、この機会に私なりに考察してみた。

役員の定年についての議論は、その人(特にトップ)が70歳代に近づくにつれ、意思決定にブレが生じ易くなることに起因するものであると捉えている。

組織運営において、全ての意思決定は、"What do I want to do?(何がしたいか?)"ではなく、"What needs to be done?(何がなされるべきか?)"という問いから始まるべきだが、70歳代が近づくと同時に独特の”焦り”と”見栄”が邪魔してしまう、前者の問いが優先されてしまう様だ。

この点で、ハーバード・ビジネス・レビュー(2008年10月号)にて紹介されていた「『競争心』が意思決定を歪める」という論文は非常に参考になった。この論文では、”意思決定に深刻なダメージを及ぼしうる3つの原因”として、以下の3つが挙げられていた。

①敵対心
②時間的プレッシャー
③スポットライト

この論文では、例として、オークションで分不相応な高値の商品を落札してしまうメカニズムが説明されていたが、高齢の役員による、同様の”意思決定の失敗”においても原因は上記の3つに集約される様に感じる。組織としての判断ではなく、個人としての判断になってしまいがちなのだ。

①敵対心
「競争することによって、”何がなされるべきか?”を見失う。」
高齢の役員にとって、敵になり得るのは誰か?
・後継者
・家族
・他の役員
・同世代の他の経営者

②時間的プレッシャー
「焦ることによって、”何がなされるべきか?”を見失う。」
高齢の役員は何に対し、焦りを感じるのか?
・寿命
・定年までの残り時間
・仕事上の達成状況に対する不満

③スポットライト
「目立つことによって、”何がなされるべきか?”を見失う。」
高齢の役員は、どういう場所で目立ちたいと感じるのか?
・ロータリークラブ、商工会議所等の経営者の集まり
・社員の手前 など

以上、役員が高齢になるにつれ、正しい意思決定がますます困難な環境が整ってくる。早い段階で定年の規定を明確にし、円滑に次の世代に受け継ぐことを検討したい。


Today's Questions.
Q:高齢の役員が、「何がなされるべきか?」に基づく意思決定ができていますか?

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9月23日”データに意味があるかないかが最大の問題である。”
われわれは往々にして意味のないデータに翻弄されてしまいます。データといかにして付き合うべきなのでしょうか。お楽しみに。

2009年9月21日月曜日

”優秀な人たちが連続して失敗する仕事は後家づくりの仕事である。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、仕事を見直す大切さについて紹介されています。タイトルの”後家”の意味は、”未亡人”のことを指す。”未亡人をつくる仕事”とはどういったものか。

ドラッカー教授は、誰が取り組んでも失敗する難しい仕事を「経営者の条件(ダイヤモンド社)」の中で、「人を殺す仕事」と呼び、仕事そのものの再構成を示唆している。

この辺りについては、9月6日の「『この人はいなくては困る。』の対処方法」において詳しく説明させていただいたので、みなさんには是非こちらをご覧いただきたい。

これからはトップ自らが、「あの人(または自分)にしかできない。」という仕事の廃止や再構成を実践していく必要があると思う。事業の目的は、”自分だけ”が必要とされることにはなく、”組織”が必要とされることにあるからだ。

蛇足だが、9月6日の投稿の後、「組織についても、『この組織がなければ困る。』というのは問題なのか。」という意見をいただいた。私個人の見解としては、「イエス。」だろう。「ウチの組織がなければ、社会が困る。」というのは、組織側からすればもっともな考え方であり、それを目指して貢献度を高めていく。

しかし、社会全体のリスク・マネジメントという視点で考えると、実際に社会が困るような状態にしてしまうのは、真の意味において「ニッチ・トップ」のやることではない様に感じる。

組織は社会という生態系の中で一役を担う存在であるはずで、特定の市場のリーダー的存在でありながら、「あまり儲からないから…」「面白くないので…」という安易な理由で、事業をやめてはならないと思う。


Today's Questions.
Q:仕事の詳細を知らずに「この仕事は彼(または彼女)でないとできない。」と言っていませんか?
Q:誰が2週間休みを取っても、機能する組織ですか?

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9月22日”問題が起こったときに手を貸せないのであれば意思決定に関与してはならない。”
高齢の役員について注意すべき点が紹介されています。お楽しみに。

2009年9月20日日曜日

”山あるところには谷がある。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、人選において注意すべき点について触れられている。強みに焦点を合わせた人事については、ここ何日かの内容でじっくりと触れてきた。

強みに焦点を合わせるという意味において、本日のページで印象的なのは、以下の2点だ。

①大きな強みをもつ人の殆どは、大きな弱みも持っている。
②人の強みはせいぜい1〜3つの分野においてのみ発揮される。

以上の点からも、いかに強みに焦点を合わせるのかがよく分かるのだが、ドラッカー教授はこう付け加えている。極めて重要な内容なので、原著の文を私なりに訳してみた。

「ひとつだけ、”弱み”そのものが重要性や妥当性を持つ場合がある。それは『品位(character)と真摯さ(integrity)の欠如』である。それら自体は何も成し遂げないが、それらがなければ、他の全てを台無しにする。これが唯一、”弱み”が人選においての絶対的な基準になるところである。」(「The Daily Drucker」p.288 中村克海訳)

要するに、いかにその者に類い希な強みがあったとしても、品位(character)と真摯さ(integrity)が欠けているのであれば、その者に権限を与えてはいけない、という意味だ。

では、この「integrity(インテグリティ)」とは具体的にどういう意味か?意外にも的確に表現する言葉が日本語に見つからないが、辞書を覗くと、「誠実さ、高潔さ、道徳的、一貫性」などが記されている。

個人的に「integrity(インテグリティ)」の意味合いとして適切と感じているのは、武士道でいう「気高さ」である。そう、われわれ日本人の一人ひとりに既に備わっているべき心だ。

「武士道(PHP研究所)新渡戸稲造著、岬龍一郎訳」には「高き身分の者に伴う義務」という言葉が見つかるが、これこそが「integrity(インテグリティ)」という言葉の解釈する上で重要なヒントであると思った。

親日家で有名なドラッカー教授が、人選の上で絶対的な基準として挙げている「品位(character)と真摯さ(integrity)」を理解するにはとても参考になる本だと思うので、今一度、読み直したいと思う。

ドラッカー教授は生前、「今後の世界をリードしていくべきなのは、日本の若きリーダー達だ。」と話していたが、その言葉の意味がとてもよく分かる本なので、みなさんにもお薦めしたい。




Today's Questions.
Q:仕事の能力だけで人事をしていませんか?
Q:トップが率先してintegrity(インテグリティ)を高めていますか?

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9月21日”優秀な人たちが連続して失敗する仕事は後家づくりの仕事である。”
ドラッカー教授の表現で”殺人的な仕事”の問題についての紹介です。お楽しみに。

2009年9月18日金曜日

”働く者が組織よりも長生きし かつ組織を動けるようになった。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”も、”第二の人生(セカンド・ライフ)”に関わる内容になっている。終身雇用が当たり前だった時代に比べ、現代の組織の寿命は短くなる一方、人の寿命は急速に延びている。

ご存じの通り、日本の平均寿命は世界でトップクラスだ。特に女性は24年連続で世界一位。今も記録を更新し続けている。また、昨今の医療科学の進歩や、様々な事故防止技術等の進化により、人の平均寿命は急速に延び、”100歳台時代”に突入する日も近いと言われている。

一方で、働き盛りと言われた若年層は減り続けている。国内の出生率も低下し続け、未成年者(20歳未満)と高齢者(65歳以上)の数は2004年に既に逆転した。国民の平均年齢の上昇や健康に対する意識の向上などにより、国民一人当たりの医療費支出は当然急増。(下図参照:iPhone等では表示できません。ご了承下さい。)





同時に、大多数の年金基金は、毎年不足金を計上する事態に陥っており、定年後の経済状況を考えると、既に崩壊は始まっていると言える。

これに追い打ちをかけるように、昨年末からの世界同時不況によって、我々は様々な”ひずみ”を目の当たりにした。資本主義社会は完全に崩壊したと言って良いのではなかろうか。

この様な危機的状況の中、ドラッカー教授は、意義あるセカンド・ライフを今から築くため、一週間に約10時間程度で良いので、ボランティアとしての活動に時間を割くことを推奨している。過度な競争やプレッシャーから無縁の世界に自らの強みを発揮できる場を探す大切さを伝えているのだ。

最近、痛切に感じるのは、社会企業家を目指す若者達(〜20歳代)の環境順応力だ。私が同世代の時代にはインターネット創世記だったため、「いかに楽をして稼ぐか?」という視点で、自分を含めて多くのベンチャーがビジネスモデルを考えていた。

しかし、最近私が出会う若者達は「いかに社会に必要とされる存在になるか?」と、完全に視点が顧客側に移っている。それぞれが社会の移り変わりと、自分の強みと弱みに深いところで向き合えている若者が本当に増えてきた。”事業”と”自分”の存在意義について真剣に考え抜いている。

営利目的の一般企業が”喰えなくなる時代”は、すぐそこまで来ている。特に30歳後半以降の人は、非営利では喰っていけない、と簡単に終わらせるのではなく、まずは何らかの非営利活動に参加することで、未来の自分にとって最適なエコロジカル・ニッチ(自然生態学的な適所)を探してみよう。


Today's Questions.
Q:週に何時間、本業とは別の活動に時間を割いていますか?
Q:「非営利なんて喰っていけないでしょ。」と言っていませんか?本当にそうですか?

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9月20日”山あるところには谷がある。”
明日は本日の内容と重複しますので、お休みさせていただきます。明後日は人事のお話です。お楽しみに。

2009年9月17日木曜日

”第二の人生をどうするか。これを考えなければならない。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”は、セカンド・ライフについて。仕事以外にも興味を持つことの大切さについて触れられています。

この中で、40代での燃え尽き現象はストレスによるものではなく、仕事への飽きによるものだ、とドラッカー教授は言うが、個人的には30代半ばから、こうした燃え尽き現象は既に始まっている様に見ている。

しかし、これは定期的な職場の異動ではこの問題は解決できず、職場以外で活躍したり、必要とされる場所を本人も意識して探していく必要がある。

たしかに、当社のスタッフを見回しても、四、五十代でプライベートが充実している方は、仕事においても、いつまでも若々しく笑顔が眩しい。プライベートの活動について訪ねると、いつまでも目を輝かせて話してくれる。

そしてこの様なスタッフは、大抵の場合、コミュニケーション能力も高く、柔軟性に富んでいるため、どの職場でも重宝される存在だ。結果として、日々の仕事が変化で溢れている。

一方、趣味という趣味もあまりなく、出社する以外は家に閉じこもっていると、職場では一つのことにプライドを持ち過ぎてしまう傾向がある様だ。往々にして、カイゼン活動(仕事の廃棄、修正等)の抵抗勢力になってしまい、異なる仕事に就いてもらいにくい存在に陥ってしまう。

では、組織として、この課題をサポートする方法はないのか?
参考までに当社の取り組みを紹介したい。

実は当社で「ドラッカー 365の金言」の朗読を始めたのには、いくつかの理由があるが、その一つに「社員の自立(精神的・経済的)を促す」という目的があった。

今後、高齢化は勿論、医療の発展と共に長寿命化が急速に進む。同時に年金システムも崩壊してゆくであろう中、会社を定年退職した後も、一人ひとりが何らかの方法で自活して行かなければならない。

もう随分前になるが、定年退職してゆく人を見て、「この人たちは、(またこれから定年を迎える人たちは、)最期までなんとかやっていけるのだろうか。」と、とても不安に感じたのだ。

その当時の職場は、悪い意味でいう”職人”ばかり。一つの仕事を何十年もやってきた人ばかりだったので、考えは凝り固まってしまい、読み書きはもちろん、議論を交わすことさえままならなかった。

「ウチの会社が何十年もかけて、この人たちをこの状態にしてしまったのだ。」と痛感し、それからコミュニケーション向上のための取り組みを続けてきた。

その後、2〜3年して、職場に柔軟性と笑顔が見られる様になり、ドラッカー・マネジメントを全員で学ぶ取り組みを始めたのだ。いつしか自分の商売を始める方もいるだろうし、非営利組織で活躍する方も出てくるかもしれない。

全員がぼんやりとであっても組織とは何かを理解することができれば、会社も成果を出しやすくなるし、退社後もその知識を使うことができるはずだ。

大げさかも知れないが、「当社の人が会社を去る時、家族や社会がその人が協力してくれるのを待っている」状態を目指したい。いつまでも必要とされる人になってもらいたいと思っている。

そのためにも、組織の外で活躍する場を作る支援をすることで、心の内なる安心を確保し、組織内にも良い影響を及ぼすことができるはずだ。

個人的には、これが決して回りくどい”間接的な”方法だとは思っていない。


Today's Questions.
Q:明日、組織がなくなったとしたら、スタッフはどうなりますか?
Q:その時を見据え、組織として準備できることがありますか?

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9月18日”働く者が組織よりも長生きし かつ組織を動けるようになった。”
セカンド・ライフの説明が続きます。お楽しみに。

2009年9月16日水曜日

”昇進を重ねる有能な上司ほどありがたい存在はない。”

 
本日の”ドラッカー365の金言”は、上司のマネジメントについての抜粋となっている。”上司のマネジメント”という言葉には若干違和感も感じるが、よりよい成果をあげるためには上司の強みも味方につけなければならない、と言われると納得だ。いかにして上司と協力関係を築くかは重要な課題となる。

少し読み進めると、ドラッカー教授はこう言っている。

「現実は企業ドラマとは違う。部下が無能な上司を倒し、乗り越えて地位を得るなどということは起こらない。上司が昇進できなければ、部下はその上司の後ろで立ち往生するだけである。」

「上司の弱みを強調したのでは、部下の弱みを強調したときと同じように、意欲と成長を妨げる。」

「上司が得意でないことをあまり心配してはならない。」

たしかに、本田宗一郎の右腕といわれたホンダの藤沢武夫氏や、ジブリの鈴木 敏夫氏の様な、最高の番頭(No.2)は、トップ(上司)の強みと弱みを本人よりもよく知っている様に感じられる。

ある種、母親的視点で、どの様な環境を作れば、相手(上司)が、よりのびのびと強みを発揮できるのかを常に考え、辛抱強く提案し続ける姿勢が印象的だ。

組織の状態が深刻化していくと、そこにいる人たちはどうしてもお互いの弱みを指摘し合うことで保身に走り、顧客の創造のために成果を上げる、という根本の目的を忘れてしまいがちだ。この悪循環はある所から突然始まり、急速に組織が腐っていく。

その予兆を捉え、状態が悪化する前に、自分から上司と部下の強みに焦点を合わせることに徹底し、成果をあげ続けられるよう自己管理していきたい。


Today's Questions.
Q:上司の強みは何ですか? 
Q:上司と自分が一人の人間だとしたら、お互いの役割分担をどの様にするのが適切でしょうか?

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9月17日”第二の人生をどうするか。これを考えなければならない。”
仕事以外の目標、セカンドライフについての紹介です。お楽しみに。

2009年9月15日火曜日

”組織は信頼によって成立し信頼はコミュニケーションと相互理解によって成立する。”

 
本日の”ドラッカー365の金言”は、強みの相互理解について書かれています。

自らの強み、仕事のスタイル、価値観がある程度明瞭になってきたら、次に周囲と話し合いなさい、とドラッカー教授は言っている。周囲といっても組織内の人間だけではなく、自分が”頼っている人たち”と、自分が”頼られている人たち”の全てが知っている必要がある。

強みや価値観は、その人のプライベートの時間の過ごし方とも密接に関連してくるため、一昔前であれば、このような情報共有は飲み会やイベントの場で行われたと思うが、今ではなかなか難しい。

当社では朝礼、昼食会、人事評価調整会、社内工場見学、クレーム処理、委員会活動等において、別の職場の、”普通で考えると会う必要のない人同士が会う”仕組みを積極的に取り入れている。なるべく部署の壁を取り払い、自由に人が意見を述べやすくすることで、組織の膠着化を予防している。

人事評価の方法を大きく変更したことによって、全ての人が日頃何を考えて仕事をしているのかが、特に直属の上司と、その他の部署の上司から見て非常に分かり易くなった。

今まであまりスポットライトが当たっていなかった無口なスタッフが、実は驚くほど冷静に今後の組織のあり方について考えていたりして、”一人ひとりの強みを発揮させる場所を作ること”こそが、リーダーの仕事なのだと痛感させられることがよくある。

製品の不良対策の場においても、不良発生直後に、その問題には全く関係のないと思われる他部署のリーダーが全員招集される。「今後、どの様にして再発を防ぐか?」について話し合うと、全く技術的知識がない人がブレークスルー的な解決策を考えつくことが多々あるし、聞いているだけでも自分の部署の活動に応用することができ、中長期的に見て非常に大きなコストダウンにも繋がる。

こうした取り組みは、開始当初は「そんな時間の余裕はない。」と一蹴されるものだが、徹底して”未来の時間(明日をつくる時間)”で話し合い、結果を生む努力を継続しよう。何年かすると、スタッフ自らの手で、組織に依存しない話し合いの場を作り、難題であっても比較的明るい雰囲気で話し合うことができるようになる。


Today's Questions.
Q:上司、部下、同僚の趣味や家族について知っていますか?
Q:自由参加で重要な案件について話し合う場がありますか?
Q:話し合いの場に笑顔がありますか?

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9月16日”昇進を重ねる有能な上司ほどありがたい存在はない。”
部下の仕事は上司を出世させること?どうぞ、お楽しみに。

2009年9月14日月曜日

”最高のキャリアとは自らの強みにあった機会によって得られる。”

 
本日の”ドラッカー365の金言”は、自らの強みを存分に活かすことのできる”機会”をつかむことによって、より大きな貢献が可能となり、社会に違いをもたらすことができる、という内容。

ここ数日のページでも触れられてきた様に、”真の強み”は”価値観”と一致させるのが望ましい。そしてその強みに集中することで、更にその強みを強化するための”アンテナ”を立てることができる様になる。

これはちょうど、ネットにおいて、検索するためのキーワードが明確になる感覚と似ている様に思う。パソコンや回線など、インフラが整っていたとしても、適切な検索キーワードが決まらないことには、目的達成に不可欠な情報にたどり着くのが困難だ。

「だれに、何を、どのように求められ、それを実現する方法は何か?そして、要するにそれは一言で言うと何なのか?」という具合に、自らについて「5つの質問」を投げかけてみることで、機会を見つけるための具体的な行動が明らかになってくる。

①わたしの使命は何か?
②わたしの顧客(貢献すべき相手)は誰か?
③顧客にとっての価値は何か?
④わたしの成果は何か?
⑤わたしの計画は何か?

まさにこのプロセスは、社会における、”自分のマーケティング”である。

特に①〜③を繰り返し考え続けることで、それに適した具体的行動に修正が必要となるはずだ。そして、これらの問いに対する答えが明確になることによって、行動や言動に一貫性が出てくる。

そのため、周囲から見ても、”彼(または彼女)の専門は○○だから、○○の時に連絡すればいい。”といった、一種の”分かり易さ”がでてくるし、周囲の人が、「それは確かに必要だ。」と思ってくれることで、自分のために積極的に”アンテナ”を立て始めてくれるのだ。

目的を明確にし、貢献すべき相手に惜しみなく自らの強みを発揮し続けることで、より素晴らしい機会に導かれていくのではないだろうか。小手先の計画や運に頼るのではなく、問いつづけながら、人事を尽くして天命を待ってみよう。


Today's Questions.
Q:□□□の部分が20文字以内だとしたら、どの様な言葉が入るべきですか?「○○さん(自分)という人がいてね、□□□□□□□□□□□人なんだよ。彼(または彼女)に連絡してあなたの事、紹介してあげるね。」
Q:自分を、より多くの人に紹介したくなる人にするために、何が不足していますか?

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9月15日”組織は信頼によって成立し信頼はコミュニケーションと相互理解によって成立する。”
本日の内容と少し重なりますが、組織内において自らの強みを相互で理解する重要性について説明されています。明日もお楽しみに。

2009年9月12日土曜日

”できないことを並のレベルに引き上げるよりもできることを超一流にするほうがやさしい。”

 
本日の”ドラッカー 365の金言”では、強みをさらに高めるための4つの注意点が紹介されている。

①強みに集中する
②それらの強みを更に高める
③強みを阻害する癖を見直す
④悪癖や態度を直す

ここでは、最も重要な①についてのみ話したい。明日のページでも触れられているが、強みの集中する前に注意したい事は、「自分が得意とする事が、必ずしもその人の強みにならない場合がある。」という点だ。”上手”は、必ずしも”価値観”と一致しない。

”上手”と”価値観”なら、選ぶべきは”価値観”だ。

誰にも、今まで出会ってきた人、職場、情報等によって高めてきた技術が有ると思うが、それが本当に自分の好きな事なのか?金銭的な報酬がなくてもできる程、好きなのか?改めて問う必要がある

この質問の答えは、自分の幼少期(12歳までのなるべく早い時期の記憶)を客観的に観察することで非常に見つけやすくなる。

Q:一番最初に強い感情を抱いた事は何か?
Q:それはなぜか?

Q:どんな子供だったか?
Q:それはなぜか?

Q:何に没頭していたか?
Q:それはなぜか?
Q:他の子に較べ、どうだったか?

Q:周囲はどのような表情をしていたか?
Q:その人たちを見て、どう感じたか?

こうした記憶に対し、今まで表面的に(安直に)感じていた解釈から更に踏み込み、じっくりと時間をかけて思い起こして欲しい。

子供の頃の環境や心境を時間をかけてじっくりと思い起こすことで、今の自分の環境や心境と強くリンクしてくる部分がないだろうか。その辺りにその人の本当の強みが眠っていると感じている。

記憶の中に見つかるのは、決してポジティブな感情だけではない。しかし、幼児期に体験したネガティブな感情は、今まで自分が得意な事をより得意にするための原動力になってきたはずだ。そうした意味で、幼児期の体験をポジティブとネガティブで区別すること自体、無意味だ。全ての経験が今の自分の栄養になっている。

見えてきただろうか、あなたの本当の強み。

あとはそこに集中し、それを徹底的に高めていく。謙虚に、粛々と。そして、これから外れる行動、言動、思考には、なるべく時間を割かない。どうしても時間を割く必要がある場合は、それを強みの強化に利用する方法を工夫してしまおう。


Today's Questions.
Q:今上手なことは、価値観と一致していますか?
Q:”真の強み”の強化にどの程度の時間を投資していますか?

そして、改めて昨日の質問を考えてみて下さい。

Q:今、”社会”という名の人が困っています。あなたに直接「(   )を(   )してほしい。あなたならきっとできると思う。」と言っているとしたら、括弧内にはどういう言葉が何が入りますか?
Q:それを実現するには、今、何に集中し始めれば良いですか?


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9月14日”最高のキャリアとは自らの強みにあった機会によって得られる。”
明日の説明は本日の内容に統合しましたので、明日はお休みをいただきます。月曜日は、強みをもって行う”自分のマーケティング”についてお話しします。お楽しみに。

2009年9月11日金曜日

”世の中に違いをもたらすためにはいかなる成果を生み出すかを考えなければならない。”

 
本日の”ドラッカー365の金言”は、目標設定時の考え方について触れられています。この中で、ドラッカー教授は、まず「何に貢献すべきかを知るためには、世の中に違いをもたらす成果をどこで生み出せるのか、如何にして生み出せるかを考えなければならない。」と言っています。

さらに成果は…

・野心的なもの(挑戦が必要なもの)
・無謀ではないもの
・意味あるもの
・違いをもたらすもの
・目に見えるもの
・できれば数字で表せるもの

であってほしいと言っています。

また、自分がいかにして貢献できるのか?を、明確にするには、以下の3つを考える必要がある、と続く。

①何が自分に求められているか?
②自らの強み、仕事のスタイル、価値観をもって、何に”最も大きな”貢献ができるか?
③世の中に違いをもたらすためには、どのような成果を生み出すか?

そして、ここから

・行うべき事
・始めるべき事
・始め方
・目標
・期限

を決めていく。

「社会は自分に何を、どうして欲しいと求めているのか?」という問いを深く考え続け、自己研鑽しつつも挑戦し続ける事で、自分が社会において担当すべきニッチ(自然生態学的意味における”適所”)が見つけられるのかも知れない。


Today's Questions.
Q:今、”社会”という名の人が困っています。あなたに直接「(   )を(   )してほしい。あなたならきっとできると思う。」と言っているとしたら、括弧内にはどういう言葉が何が入りますか?
Q:それを実現するには、今、何に集中し始めれば良いですか?

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9月12日”できないことを並のレベルに引き上げるよりもできることを超一流にするほうがやさしい。”
強みを活用して、行うべき事、行うべきではないことを明確にしましょう。明日もお楽しみに。

2009年9月10日木曜日

”仕事ぶりとは百発百中のことではない。百発百中はサーカスの話である。”

 
本日の”ドラッカー365の金言”は、”失敗を許容できる組織”の重要性について触れられている。タイトルが意味するのは、”仕事では、サーカスの技の様に、同じ事を何度も練習して失敗しないようにできたとしても、それは何も意味をなさない。”ということだ。

ものづくりにおける、トヨタ生産方式の「JIT(ジット/ジャストインタイム)(Wiki)」を学ぶにあたり、「JIT改革の基本精神十箇条」と呼ばれるものがある。失敗を恐れずに常に新しい方法を追求する、トヨタ生産方式のエッセンスが詰まった内容であり、ドラッカー思想にも通ずる内容なので、ここで紹介したい。

JIT改革の基本精神十箇条
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一、つくり方の固定観念を捨てよ。
一、出来ない理由よりやる方法を考えよ。
一、言い訳をするな、まず現状を否定せよ。
一、パーフェクトを求めるな五十点でよいすぐやれ。
一、誤りはすぐ直せ。
一、改革に金をかけるな。
一、困らなければ「チエ」がでない。
一、「なぜ」五回、真因を追求せよ。
一、一人の「知識」より十人の「チエ」を。
一、革新は無限である。

そう、これはドラッカー教授の言う「体系的廃棄」と「陳腐化」だ。(8月23日の記事参照)中にはネガティブな表現があるので、嫌悪感を抱く方もいるかも知れないが、環境の変化に順応する組織を作る上で、カイゼンは不可欠であり、同時に並大抵のやりかたでは現状維持体質から抜け出せない。

事実、当社ではこの十箇条を4年間に渡り全員で唱和しているが、私も含め、まだまだ理解が足りないと感じる。

ここ数日の記事で触れたとおり、人は組織への貢献を通じて自立し、より良い選択ができる様になる。そのためには学びが必要であり、学びは本やセミナーだけではなく、実践を通じて体得しなければならない。

組織としてすべきは、”懸命に立とうとする子供を見守る親を演じきる”ことだと思う。尻餅ついたとしても、それは当たり前。勇気を持って難題に踏み込む者を信じ切り、少し離れた後方から支援することではないだろうか。

そもそも人の「自立」は、孤独な戦いの下に生まれる。そこで自立しようとする人間の失敗を責める空気が生まれると、その勇気ある人はたちまち組織を去ることとなる。


Today's Questions.
Q:「責任ある選択」のできる人が辞める組織になっていませんか?
Q:どの様にすればそうした人が自由に取り組める環境が作れますか?

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9月11日”世の中に違いをもたらすためにはいかなる成果を生み出すかを考えなければならない。”
明日はドラッカー流目標の決め方。どうぞお楽しみに。

2009年9月9日水曜日

「高校生にドラッカーを贈る」(8月分)

 
いつも当ブログをご覧いただき、誠にありがとうございます。
先月のアフィリエイト集計結果が出ましたので、ご案内申し上げます。

発送済み商品合計:2
紹介料合計:¥99

お買い上げ、誠にありがとうございました。ブログ開設からほんの2週間で2冊もご注文いただけたこと、この場をお借りして心よりお礼申し上げます。

ブログ上でもご案内の通り、紹介料合計はドラッカー学会の「高校生にドラッカーを贈る」運動に全額寄付させていただきます。(この運動の詳細については近日紹介予定です。)

なお、現時点で9月分は発送済み商品合計6点、紹介料合計¥353となっております。会社等、組織でドラッカー本を多数ご購入される場合は、是非当ブログよりご注文いただけますと幸いです。

”階段はなくなった。縄ばしごもない。蔦(つた)が生えているだけである。必要なのは鉈(なた)である。”

 
本日の”ドラッカー365の金言”は、自己責任によるキャリア選択の重要性について記されている。このページのユニークなタイトルからは、「しがみつけるものは蔦(つた)ぐらいしかないのだから、勇気を持ってそれを自らの手で取り払いなさい。」といったメッセージが伝わってくる。

「『本当の自由』を手に入れて欲しい。」というメッセージは、ドラッカー教授による全ての作品の根底に流れる、一貫した願いではないだろうか。

「自由とは、責任を伴う選択である。自由とは、権利というよりも、むしろ義務である。真の自由とは、あらゆるものからの自由ではない。それでは特権にすぎない。」(「産業人の未来」)

2年ほど前に巡り会うことができた、この一文。その後の私の行動を極めて大きな影響を与えてくれた。

われわれ、知識労働者は「もっと自由にしてほしい。」と願う一方で、「無理。」「○○がないから、できない。」「○○が○○させてくれないからできない。」と”やらないこと”を暗に前提とし、”できない理由”や”保身”に走ってしまいがちだが、こうした行動によって、真の自由を手にするのは不可能に近い。

”求める(しがみつく)”ことによって、自らを拘束し、同時に安心してしまう。自由を求めつつも、不自由に安堵してしまうのだ。

「責任ある選択」とは、社会に”どこまで自らの強みを捧げることができるのか”という、自らとの戦いを意味する。これは口で言うほど簡単な事ではなく、時として非属人的な意思決定にもなりかねない。

しかし、明日の社会や組織にとって、今この時点で必要とされている意思決定をできる、自立したエグゼクティブ(知識労働者)こそが、こうした乱気流の時代で求められているのではないだろうか。

常に”責任ある選択”のできるリーダーを目指したい。


Today's Questions.
Q:求めすぎて、自分を縛り付けていませんか?
Q:今の組織に、真の自由を手にしている人は何人いますか?
Q:組織(またはトップ)は、その人達を理解し、支援していますか?

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9月9日”仕事ぶりとは百発百中のことではない。百発百中はサーカスの話である。”
失敗が無い組織は、健全な組織とはいえません。間違いを認める組織とは?お楽しみに。

2009年9月8日火曜日

”一人ひとりの強みを活かすことによって組織の成果と個の自己実現が両立する。”

 
本日の”ドラッカー365の金言”は、個のニーズと組織のニーズの調和について記されている。

「組織」は、その目標実現のため、「人」を必要とする。同時に「人」は、その自己実現のため、「組織」を自己実現の道具として活用できる。この様に、組織と組織を構成する人のニーズはマッチすると、ドラッカー教授は説いている。

そして、原著の”The Daily Drucker”のACTION POINT(なされるべきこと)には、「自らの価値観と、組織の価値観が一致(compatible:一致、両立、適合、矛盾がないの意)しているか明らかにして下さい。」と書かれている。

確かに、組織の成果がなかなか顕在化してこない時や、組織が成果に向かって集中できていない時、「辞めたい。」と申し出る人が増える。こうした時、組織の目指すものと、本人が目指すものが本当にずれているのかを明確にする必要がある。

この話し合いには、組織の代表としての立場だけで向かうのではなく、一個人としても相談に乗ることを心がけている。それがないと本人が本当に求めていることにアクセスできず、感情にまかせて両者が誤った判断を下してしまうことがあるからだ。

また、この話し合いによって、彼(または彼女)が本当に求める状態を、同じ組織内において実現する方法を探すことができる場合も多々ある。しかし、その実現には本人の新たな決意と、周囲の人間がそれに協力する勇気が必要となる。

悩み苦しんだ本人が、退職の瀬戸際で思いとどまり、自らの責任をもってやり直したいと決心した時、また周囲もそれに呼応する時、組織は飛躍的に成長する。自責において選択する、自立したプロフェッショナルが生まれる瞬間だ。

人が本当の意味で自分自身に誓いを立て、周囲の期待に応えるために自立を決意する瞬間は、何事にも代え難い美しい瞬間だ。

真の”自立による正しい選択”によって、その人は自由になり、周囲も変えてゆく。同時に組織の、社会に対する貢献も高まってゆく。

組織だからこそ、できることがある。


Today's Questions.
Q:9月6日の4つの質問を自分自身に問いかけると、どういった答えが出てきますか?
Q:あなたが自責において行動し続けることで組織のニーズと自らのニーズを両立できますか?

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9月9日”階段はなくなった。縄ばしごもない。蔦(つた)が生えているだけである。必要なのは鉈(なた)である。”
仕事を自らの責任において選択しよう、といった内容です。お楽しみに。

2009年9月7日月曜日

”組織は人を変える”

 
本日の”ドラッカー365の金言”は、「非営利組織の経営」より。
強みに焦点を合わせた人材育成についての説明となっている。

このページで、ドラッカー教授は、人の育成において、以下の4点を注意しなくてはならないとしている。

①できないことを学ばせてはならない。
②狭い視点と近視眼で育ててはいけない。
③王子様の様に育ててはいけない。
④強みに焦点を合わせなければならない。

①については、”できない”事から学ばせてはならないという意味。マナー、態度、スキル、知識は学ぶことができるが、人の個性を変えることはできないので、弱みに焦点を合わせてはいけないという事だ。

②は、確かに特定の分野の知識やスキルを学ぶ必要があるが、育成はその人の人生に関わることなので、それ以上の学びが必要となる。限られた内容で短期的に考えるのではなく、長期的に見なければならないという意味。

③は、エリート扱いすることで、潜在的可能性だけを見たり、「これをやります。」といった、やる気や約束をみて育てるのではなく、常にパフォーマンス(実力)や成果に注目しなさい、という意味だ。

④は、特にエグゼクティブ(幹部)は、人の強みに焦点を合わせることで、要求(成果)を厳しい水準で見なければならない。そしてじっくり時間をかけて1年前の約束とその結果について評価しなければならない、という意味だ。

至って当たり前の様に感じられるこの4項目だが、実際問題としては非常に難しいと感じる。強みに基づく組織というのは、お互いの弱みに対してある程度我慢をしなければならない、とドラッカー教授は言う。もちろん、仕事をするにあたって絶対に必要不可欠な要素もある。(ここ数日間の記事参照)しかし、強みに焦点を合わないと、人の力を超越する真の組織にはならない。

そして、これが実現している組織には、以下の様な幾つかの要素が必要だと感じる。

①トップを含め、全員がお互いの長所短所を理解し、尊重している。
②部署にかかわらず、自らの強みを惜しみなく提供しあっている。
③それぞれが強みを高めるため、自発的に学んでいる。

この状態を導くため、どの様な取り組みが可能か、じっくり検討したい。


Today's Questions.
Q:お互いの弱みを指摘し合う組織になっていませんか?
Q:部署の壁にしがみついていませんか?
Q:できない部分を補う教育だけになっていませんか?

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9月8日”一人ひとりの強みを活かすことによって組織の成果と個の自己実現が両立する。”
知識労働者の成果とはなにを指すのか?お楽しみに。

2009年9月6日日曜日

「この人はいなくては困る。」の対処方法

 
「経営者の条件(ダイヤモンド社)」を読み進めてみると、「(特定の人について)手放せない。いなくては困る」という場合についての対処方法が記されている。個人的にも最近痛切に感じていたことが、この説明に凝縮されていたので、ここで紹介したい。

ドラッカー教授は、ある人が『欠くことができない。』という理由は以下の3つしかあり得ないとしている。

①その者が実際には無能でありかばってやる必要がある場合
②弱い上司を支えるために、その者の強みを使っている場合
③重要な問題を隠すため、あるいは取り組みを遅らせるために、その者の強みを使っている場合

ドラッカー教授は、強く「いずれの場合であっても、『欠くことができない』と言われる者は、なんとしても直ちに異動させるべきである。さもなければその者の強みを壊してしまう。」と説いている。

「あの人にしかできない。」という仕事は超人的になり、本人も組織をも破壊するリスクが発生する。難しい仕事に就く者にとって「こんなに難しい仕事は、あなたしかできない。」という言葉は代え難い喜びを感じられるかも知れない。

しかし、それを言っている相手は、無意識のうちに「(超人的にこなしてくれる)あなたにやらせておけば、自分は仕事の簡素化もせず、ノータッチでいられる。辛いかも知れないが、頑張っていてくれ。」と意思表示しているのと同じだ。

もし、この状況を上司が理解し、意図的に行っているのであれば、これは上司の怠慢であり、ドラッカー教授が必要不可欠とする「真摯さ」には程遠い。

この状態は、心理学で言われる”利用し合う関係”、「共依存(Wiki)」に酷似しており、直ちにお互いが自立する道を探す必要がある。

本当に人を重んじる組織運営を目指すのであれば、「この人が居なければ成り立たない。」と言わずに継続発展できる人事を行わなければならないと思う。
 

”腐った強い者ほど組織を腐らせる者はいない。”

 
本日のページも、「経営者の条件(ダイヤモンド社)」からの引用だ。ここでドラッカー教授は、人事考課の際に効果的な4つの問いについて触れられている。

本日の内容は、極めて繊細な内容で、間違いがあってはならないと思うので、引用が多いがその点をご理解いただきたい。

1)よくやった仕事はなにか
2)よくできそうな仕事は何か
3)強みを発揮するには何を知り、何を身につけなければならないか
4)彼(または彼女)の下で自分の子供を働かせたいと思うか
 ①そうであるならなぜか
 ②そうでないならなぜか

ドラッカー教授は人事においては強みに焦点を合わせる事を強調しており、上記の問いを見ても、4)の②を除き、強みの強化を意識した問いになっている。

仕事における技術向上としての強みの強化において1)〜3)は納得がいくが、4)の問いにはどういった意味があるのだろうか。極めて抽象的な表現でもあるが、その答えは一瞬にして出てくる感がある。

「経営者の条件」において、ドラッカー教授は、この4)の問いで明らかになってくるのは、対象となる人の”人間性と真摯さ”であることを示している。

「人間性と真摯さは、それ自体では何事もなしえない。しかしそれらがなければ、他のあらゆるものを破壊する。したがって、人間性と真摯さに関わる欠陥は、単に仕事上の能力や強みに対する制約であるにとどまらず、それ自体が人を失格にするという唯一の弱みである。」(「経営者の条件」)

上記の理由から、本日のページの結論として、「優秀な若者は強い上司をまねたがる。したがって、腐った強い者ほど組織を腐らせる者はいない。」としている。

人事に限らないが、問題ではなく機会に焦点を合わせなければならない。しかし、人間性と真摯さを欠く人間を上司にしてはならない。

あらためて肝に銘じたい1ページだった。


Today's Questions.
Q:弱みを強調する人事評価になっていませんか?
Q:部下は、その人の子をあなたの下で働かせたいと思うでしょうか?
 ①そうであるなら、なぜですか?
 ②そうでないなら、なぜですか?

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9月7日”組織は人を変える。”
続いて、人材育成における”強みに焦点を合わせなければならない。”について触れられています。お楽しみに。

2009年9月4日金曜日

”成果を上げる人は行うべき事を行っている。”

 
本日のページで紹介されている内容は、組織の運営を懸命に取り組むすべての人にとって救いとなる内容ではないだろうか。

ドラッカー教授は数々のコンサルティングを通じ、世界の様々なキャラクターをもつ一流リーダー達を観察した結果、「そもそも成果を上げるタイプなど存在しない。」と述べている。共通点はたった一つしかない。

「成果を上げる人は、能力、関心、知識、気性、性格、仕事の方法において多様である。あらゆることにおいて千差万別である。共通点は、行うべきことを行っているだけである。」(「経営者の条件」)

「成果をあげる人とあげない人の差は才能ではない。いくつかの習慣的な姿勢と、基礎的な方法を身につけているかどうかの問題である。しかし組織というものが最近の発明であるために、人はまだこれらのことに優れるに至っていない」(「非営利組織の経営」)

つまり、リーダーとは素質によるものではなく、どのような姿勢で取り組んでいるのかで決まるということだ。

当社では数年前より、新たな管理職やリーダーを数名の候補者の中で立候補してもらって決めることにしている。最終的に立候補が現れない場合には経営で決めることにしているが、やはりその中で候補者が心配するのが自らの「リーダーとしての資質」についてである。

「私には知識がない。」「技術がない。」「人前で上手く話せない。」「教育されていない。」と候補者によって様々な不安を打ち明けてくれるが、「真摯に役割に徹する気持ちさえあれば大丈夫です。」と伝えている。

昨日の「丘」の話でも触れたが、リーダーになるということは能力云々ではなく、役割(視点)が違うというだけで、”時間の使い方”が異なるだけだ。自分の時間の”中身”を、組織で与えられた”役”に合わせることで、いつでも人は与えられた役で成果を上げられる様になる。

もちろん、それに必要な知識を身に付けていく必要はあるが、基本的には「感じ、考え、行動する。」このプロセスを役に合わせられると、誰でもリーダーができるようになる。

新入社員であっても、何を任せてもできそうに思えたりするのは、素直さや柔軟さにあるのではないだろうか。

先日観た、NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」で、ロシアのボリショイバレエ団の日本人ソリスト、岩田守弘氏(38)が紹介されていた。

ロシアという全く文化が異なる中で、彼はいかなる役でも絶対に断らない。新たな役をもらうと、その役や社会的背景を徹底的に研究し尽くし、他の何倍も練習を積む。

そしてそれが単なる物まねで終わらない。完全に役柄を理解した上で、最後に彼の味をつけることで、伝統を守ると同時に全く新しい価値を生み出すのだ。

この一連の流れの中に、理想のリーダーとはいかなる姿勢であるべきかを見ることができた。


Today's Questions.
Q:まず、あなたが与えられた”役”を理解していますか?
Q:役を演じきるために、どの様な習慣を作ればよいですか?

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9月6日”腐った強い者ほど組織を腐らせる者はいない。”
明日はお休みをいただきます。

2009年9月3日木曜日

”自由になる時間をまとめなければならない。”

 
本日のページでは、成果を上げるためには、ある程度の「自由にできる時間」をまとめてつくる必要がある、との説明がなされている。

昨日も触れたとおり、我々”知識労働者”は、成果に貢献することが仕事だ。それを理解しているにも関わらず、目先の”よりドラマチックな問題解決”に心奪われてしまう。明日をつくることのない「過去の時間」の沼に飲み込まれてしまうのだ。

しかし、明日をつくるために不可欠な仕事は、往々にして緊急度が低く、極めて地味な取り組みが必要となる。本当は今すぐ始めるべき事だが、明日に延期したとしても、それを誰かに責め立てられることがない。

そして、そこには必ず”イレギュラー”という名の”麻薬”が現れる。「イレギュラーが発生したため…」「緊急性の高い問題が発生し、…」などと言いながらその対処に即座に飛びつくことで、その日が充実していたとの錯覚に陥ってしまう。

しかし、”イレギュラー”が毎日発生したら、それはもはや”イレギュラー”とは言えない。

私は、当社のスタッフに、「勇気を持って、あなたの戦場から一旦離れてください。」と、ざわざわとした雰囲気の職場を”戦場”に例えて話すが、それは常に客観的視点「メタ認知(Wiki)」を持って落ち着いて取り組んで欲しいと願うからだ。

リーダーは時として、部下達と共に戦っていた”戦場”に背を向け、一人丘の上に向かわなければならない。そしてそこから戦場をしばし観察する必要がある。「一体、今何が起こっているのか?」「これから何が起こるのか?」「そもそも相手は何なのか?」等、現状を詳細やその意味を把握し、次なる一手を編みだし、実行するのが我々の役割であるはずだ。

リーダーが部下達から離れることができないと、”組織の失明”を招き、遅かれ早かれ部下達と共に息絶える事になる。

これは日本人ならではの美徳でもあり、今後グローバル化する社会において日本人の深刻な課題だと思う。「共に戦う」という意味を、「同じ場所、同じ視点で戦う」と謝って解釈してはいけない。それではリーダーが存在する意味がない。

私はこれを”体裁の良い現実逃避”と呼び、全員に「常に社外から当社を見て下さい。」と伝えている。本当の意味で社外から自らの組織を見られた時、現在の行動には必ず何らかの誤りを発見できるはずだ。これを粛々と修正しよう。

まとまった時間を作る。そして、「丘の上」に行って戻ってきたのであれば、「見に行ったけど、何も異常無かったよ。」では済まされない。組織に必ず何らかの変革をもたらさなければならない。


Today's Questions.
Q:体裁の良い現実逃避で一日が終わっていませんか?
Q:どの様にすれば、一日の半分を丘の上で過ごせますか?

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9月4日”成果を上げる人は行うべきことを行っている。”
明日は、個人的に「経営者の条件」の中で最も好きな内容が紹介されています。ドラッカー教授が挙げる良い経営者とは?お楽しみに。

2009年9月2日水曜日

”やめても何も起こらなければ結論は、直ちにやめよである。”

 
本日のページでは、成果を上げるためにまず取りかかるべき事、「時間の記録」について紹介されている。過去の経験からして、常に忙しい、忙しいと口癖の様に言う人ほど、実際に何に対して時間をとられていて、どうそれを改善するのかを見直す人が少ない。

手当たり次第に予定を埋めていくことで、和やかな環境をも「戦場」に変えてしまう方がいるが、これでは忙しくなることが目的となってしまっている。事業の目的は、あくまでも「顧客の創造」である。

このページでドラッカー教授が勧めているのは、時間の使い途の見える化だ。実は私がドラッカー・マネジメントの基礎を習った国永秀男先生の「ドラッカー塾(ダイヤモンド社)」のエグゼクティブ・コースでも、この宿題があり、その後の私の行動や思考に大変大きな変化をもたらしてくれた。

始め方そのものは至ってシンプルだ。毎日、自分の時間を”分単位”で計測し、紙に記録していく。単にやったことを記録していくのではなく、その時間(1分)が「過去の時間(クレームなど、過去の活動の処理等に費やす時間)」と「未来の時間(今後の活動に繋がる時間)」、どちらだったのかを判別しながら記録していく。

8月29日の中でも触れた「せっかく…」の話の通り、普通の流れでは「過去の時間」になってしまう事柄も、ある種、無理矢理にでも「未来の時間」にすることも可能だ。

ドラッカー塾の国永先生は、「未来の時間を、少なくとも半分は持てる様に努力して下さい。」と仰っていた。確かに、社員は大半が過去の時間を送っているわけで、トップが過去の時間を送っていては組織の明日はないというのは納得できる。

同じ塾生のお一人がそれを色分けしてみたところ、いかに「過去の時間」に毎日を費やしているのかが一目瞭然となり、全員で問題意識を高めることができた。

我々は、どうしても目の前にある問題を解決する事に時間を割いてしまう。それは私たちが慣れ親しんだ事でもあるし、それを続けることで、新たなステップを踏み出すことから逃げることもできる。

今一度、未来の「過去の時間」の排除と「未来の時間」の拡充を具体的な仕組みとして検討しよう。


Today's Questions.
Q:何らかの問題が発生した時、あなたが言葉の始まりは次の内、どれですか?
  ①「なぜ?」②「誰が?」②「どうしたら?」
Q:感覚だけでなく、実際に1週間で何分、「未来の時間」を送ることができていますか?

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9月3日”自由になる時間をまとめなければならない。”
我々にとって耳の痛い話が続きます。明日はいかにして自由な時間をつくるのか?についてのご紹介です。お楽しみに。

2009年9月1日火曜日

”仕事のできる者はまず時間に手をつける”

 
9月の内容は、その多くが「経営者の条件(原著:The Effective Executive)」という本からの抜粋で構成されている。”経営者(Executive)”と名の付くからには、トップや経営幹部が読むべき本かというと、決してそうではない。

この本に、「今日の組織では、自らの知識や地位のゆえに組織の活動と業績に実質的な貢献を果たす知識労働者は、すべてエグゼクティブである」という一文がある。つまり、この本は全ての知識労働者を対象に書かれた本である。

”知識労働者”とは、組織において自らの貢献に責任を持ち、意思決定する人を指す。簡単に言ってしまえば、「組織にいて、正しい選択をすべき人」である。国内の仕事において、「言われたことをそのまま実行するだけ」という仕事はほぼ存在しないのではないだろうか。

そうした意味で、すべての仕事は知識労働であり、すべての人はこの本を読むべきであると思う。実際、私はこの本に出会ったことで、「社員全員が”経営者”として、より良い意思決定に参加すべきだ。」と確信し、朝礼におけるドラッカー本の朗読を始めた。

それまではおぼろげに「経営者だけがドラッカーを読んでも、意味がないのではないだろうか?」と考えていたのが、この本を読んで「やはり、そうか!」となったわけだ。

当初は、現在の様に「ドラッカー365の金言」ではなく、この「経営者の条件」の朗読から始めた。一昨年の年末には全正社員にこの本を配った程、当社の全員にとってのメンターと言える大切な本である。

さて、製造業を営む当社では、現場で作業するパートさん達も全員”知識労働者”であることを理解していただき、作業上の意思決定(何を為すべきか?何を為さざるべきか?)を改善すべく活動している。

そのため、毎朝15分間の朝礼を各職場で楽しみながら実施することで、日々の意思決定をより柔軟かつ的確に行われる様、様々なメニューが組まれている。その詳細については後日ご紹介するとして、これらは全て”時間”のカイゼンに着手したことから派生していることを強調したい。

朝礼だけを例にとっても、何年か改良を続けてみると驚くべき効果が生まれてくる。一見、非効率的な活動から、ある意味無限に時間をつくり出すことができる様になってくるのだ。

我々一人ひとりがもっている共通のリソース「時間」を、どのベクトルで使うべきか、または使うべきでないか。今後の内容を通じ、改めて考えたい。


Today's Questions.
Q:あなたの本来の仕事(使命)は何ですか?
Q:日々の問題解決ばかりに追われていませんか?
Q:落ち着いて次なるステップを考える時間を持てていますか?

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9月1日”やめても何も起こらなければ結論は、直ちにやめよである。”
成果を生まない時間の浪費をいかにして排除するかについて考えましょう。お楽しみに。